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米NBA選手のMVP獲得を支えた「足首サポーター」

医療からスポーツ領域へ 日本シグマックス社長が語る事業戦略
米NBA選手のMVP獲得を支えた「足首サポーター」

日本シグマックス・鈴木広三社長

 日本シグマックス(東京都新宿区、鈴木広三社長、03・5326・3200)は、ギプスや腰痛帯など主に整形外科用の医療機器・医療用品で足場を築きながら、スポーツやヘルスケア領域に進出してきた。海外拠点も米国と欧州(フランス)、中国にあり、近年は特に米国でのスポーツブランドとしての伸びが見込まれている。今後の展開について創業者の鈴木社長に聞いた。
 
 ―1993年に始めたスポーツブランド「ZAMST(ザムスト)」シリーズが、米国で好評のようですね。
 「NBA(全米プロバスケットボール協会)のステファン・カリー選手は、足首にけがをし、当社のサポーターを使っているが、それで14年のMVPを取った。米国ではNBAのMVP獲得は大変なこと。知名度も向上し、販売面で大きくプラスに働く」

 ―他のスポーツブランド・用品メーカーに比べた強みは何でしょうか。
 「わが社の売り上げは、7―8割が医療向け。整形外科が中心で、日本の大方の整形外科には当社製品が入っている。ここで培ったノウハウを〈スポーツを科学する〉というコンセプトにしてどんどん投入している。特に米国は、けがをしてからではなく、けがをしないようにサポーターを使う傾向が強い」

 ―製品レベルでは、どんな点が他に比べ優れているのですか。
 「我々の製品は、圧迫しながらフィットし、それでも快適さを損なわない。設計のノウハウが確かにあり、スポーツブランドやアパレルの企業がひしめく中で生き残った。当社製品は現在、日本国内では約1500のスポーツ店で扱いがある」

 ―加齢とともに運動機能は衰えます。高齢化ニーズをどう捉えていますか。
 「事業ドメイン(領域)を『身体活動支援業』と定義し(骨、関節、筋肉や神経からなる)運動器の診断・治療だけでなく予防や回復・復帰や維持・向上まで含めて支援することを明確にした。また、製品ラインアップは縫製品が中心だが、機械モノも増やす。たとえば、国内最小、最軽量の超音波骨折治療器『アクセラスmini』を開発し、7月にレンタルを始めた。アイシング製品・システムも現在は第四世代に入った。海外での拡販とともに、既存事業も進化させていく」
 
 【チェックポイント/攻めどころ確認し拍車】
 日本シグマックスの14年の単体売上高は約95億円。整形外科やスポーツ向けで地歩を築いたとはいえ、「今までの延長線上では発展はない」(鈴木社長)段階にある。医療分野では、診療科や疾患領域にもよるが、医療機器市場特有の安定した世界で良しとしてしまっている中小メーカーは少なくない。一方、この規模で医療機器とスポーツ、ヘルスケア領域を両立させている企業も少ない。企業は本来、成長していてこそ活力が維持される。攻めどころが明確になったところで、今後アクセルがかかりそうだ。
(文=米今真一郎)
日刊工業新聞2015年10月20日 モノづくり面
斉藤陽一
斉藤陽一 Saito Yoichi 編集局第一産業部 デスク
同社HPの「カラダのつくりとケガ」というコーナーでは、肩、腰、ヒザといった身体の主要部位ごとに、その構造、起こりえるケガを紹介しており、けっこう勉強になります。

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