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研究インフラの持続可能性に黄色信号が灯る日本、OECDの提言活かせるか

【研究の必須基盤】

研究にもインフラがある。それがないと研究できない、研究を実施する際の基盤的な施設や設備が研究インフラである。物質や細胞を計測する装置、合成や加工するためのプロセス機器、スパコンや放射光などの大型施設も研究インフラと言える。

実験データベースなども「研究データインフラ」として欠かせない存在になりつつある。このような研究インフラは大学や産業界にとって必須の基盤であり、世界の研究開発活動の進展とともに、先端技術を備えた装置が新たな発見やイノベーションの芽を生み出している。

日本にはナノテクノロジープラットフォームなど、利用ニーズの絶えない世界的に見て優れた共用型研究インフラの仕組みがある。しかし今、進歩ゆえの難しさが研究インフラに生じている。高度に複雑化した科学技術を駆使する機器は、高額化が進み、装置を操作する専門技術や、ノウハウを身に着けたエキスパートも欠かせない。

国全体で見ると、研究インフラの持続可能性には黄色信号が灯る。全国各地の大学や研究機関では更新が滞り、研究者が高難度のテーマに挑戦しようにも、装置の性能不足や老朽化、技術者不足からくる運転継続の困難、更新財源の不足、そして次世代機の開発環境の不足など、問題は複雑に絡み合う。

【OECDが提言】

こうした研究インフラにまつわる問題は、国際的にも共通の課題として認識されている。

経済協力開発機構(OECD)が集中的に検討し、各国の研究インフラを改善し最適化するための提言を今年8月に発表した。筆者は日本からの専門家メンバーとして、提言策定に加わった。

OECDの提言には二つのポイントがある。一つは研究インフラの利用者の視点に立ち、多様なニーズを持つ利用者がより使いやすくなるようアクセスメカニズムを最適化していくこと。もう一つは、研究インフラを構築・運営し、所望の研究開発成果を得てさらに発展させ、役割を終えたものは終焉させる、または新たな次世代機へと更新する。その全ライフサイクルを見据えたロードマップを持ち、設備のポートフォリオマネジメントに取り組むことが提起された。

こうした国際提言は示唆に富み、日本の実情に即した研究基盤戦略の構想に生かすよう期待したい。

◇科学技術振興機構(JST)研究開発戦略センター フェロー/総括ユニットリーダー 永野智己
学習院大学理学部化学科卒、グロービス経営大学院経営学修士(MBA)。主にナノテクノロジー・材料・デバイス分野の戦略立案を行ってきた。JST研究監、文部科学省技術参与を兼任。
日刊工業新聞2020年9月28日

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