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永守さんだけじゃない!京都企業、M&Aの連鎖が成長呼び込む

「足し算のM&Aは考えていない。かけ算の効果が狙い」(オムロン社長)
永守さんだけじゃない!京都企業、M&Aの連鎖が成長呼び込む

上段が山口悟郎京セラ社長(左)、永守重信日本電産会長兼社長。下段は澤村諭ローム社長(左)、山田義仁オムロン社長

 企業の成長戦略には合併・買収(M&A)が欠かせない。それはメディアに大きく取り上げられる巨額投資ばかりではない。超大手ではない企業や中堅・地場の企業にとっても、日常的な経営手段として定着したといえよう。最近の京都企業の動向に、そうした思いを強くする。

 京都企業の中では、以前から日本電産が積極的なM&A戦略で知られている。同社は2015年度だけで、すでに6社を買収した。しかしこれ以外にも、京セラオムロンローム、堀場製作所、日本写真印刷、ニチコンなどが15年に入ってからM&Aを実施している。

 オムロンは米国の産業ロボットメーカー、堀場製は自動車開発のエンジニアリング会社、京セラは半導体メーカーをそれぞれ買収した。中には買収金額が100億円を超える事例もいくつかあるが、一つひとつの規模は決して大きくはなく、派手さもない。

 各社に共通しているのは、M&Aを成長戦略の中核に据え、事業拡大や新たな領域への展開、海外市場への進出などのスピードアップを狙っていることだ。米国でロボットメーカーに加えて制御機器メーカーを買収したオムロンの山田義仁社長は「(経営資源として自社が持っていない)ミッシングピースを埋めることで、成長が加速する。足し算のM&Aは考えていない。かけ算の効果が狙い」と強調する。

 日本電産は創業から50件に迫るM&Aによって急成長を遂げ、永守重信会長兼社長の一代で売上高を1兆円まで引き上げた。この達成と同時に、永守会長は「10兆円を目指す」と表明している。その達成時期がいつになるかはともかく、こうした成長への飽くなき執念が、他の京都企業を触発している面もありそうだ。

 京都には売上高1兆円を超す超大手企業だけでなく、異なる分野で成長を遂げながら切磋琢磨(せっさたくま)してきた優れた企業が多い。M&Aで事業規模拡大が加速するだけでなく、従来の競争環境が変わる可能性がある。これが新たな飛躍につながることを期待したい。
日刊工業新聞2015年10月20日 「社説」より
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
オムロンの米ロボットメーカーの買収金額は241億円。米国の関係者の間では相場がつり上がったという声も聞こえるが、かけ算効果はこれから見せてもらうことになる。日本電産のM&Aチームは他社からごっそりスカウトしてきているが、他社の部隊はどうなっているか今度調べてみよう。

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