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東洋ゴム防振不正。船舶・鉄道業界、サプライチェーンたどる

中長期で周辺機器に悪影響を及ぼす可能性
東洋ゴム防振不正。船舶・鉄道業界、サプライチェーンたどる

14日に会見を開いた東洋ゴム

 東洋ゴム工業が建築用免震ゴムに続き、産業用防振ゴムでも品質検査のデータを改ざんするなどの不正を行っていたことが判明し、船舶や鉄道の業界で不安が広がっている。防振は振動や騒音を抑制して乗員の快適性を高める機能を持つが、振動が中長期で周辺機器に悪影響を及ぼすこともある。このため、メーカー各社は東洋ゴム製品使用の有無の把握を急いでいる。

 「船舶エンジンのカップリング(軸継ぎ手)では、振動が大きくなれば軸受や軸の疲労破壊につながる可能性もある」(エンジンメーカー)。産業用防振ゴムのデータ改ざんが明らかになってから、メーカー各社は状況把握と独自調査に乗り出した。

 川崎重工業は船舶で東洋ゴム製品の使用を確認。現在、不正があった製品に該当するかや製品への影響の有無を調査中だ。船舶用エンジンの一部機種で使用が判明したヤンマーも調査を進めている。

 日立造船は自社で該当製品を購入していないことを確認。「念のため、調達している部品メーカーの方でも使用していないかを確認中」(広報グループ)とサプライチェーンをたどっている。

 船舶ではディーゼルエンジンの減速機と軸受をつなぎ、回転振動を吸収するゴムカップリングなど、重要な防振ゴムがある。いずれも短期では問題はないが、中長期では部品の疲労破壊だけでなく、振動に弱い周辺電子部品への影響も指摘されている。

 一方、鉄道分野では変圧器の振動を抑えるゴムや、車体と台車をつなぐリンク棒に使用する防振ゴム製品がある。船舶と同様、すぐさま安全性に関わるものではないが、「長期で問題ないとは断言できない」(車両メーカー)。

 ただ、鉄道各社の定期点検は頻度も高く、日常的に不具合のある部品を改修・交換している。「部品や装置の脱落などにはいたらず、安全性に問題はない」(JR東日本)と見ている。該当製品を使用している総合車両製作所には東洋ゴムから連絡があり「『性能面での問題はない』との説明を受けた」(広報担当)という。
(文=坂田弓子)
日刊工業新聞2015年10月19日 3面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
東洋ゴム側の発表によると、鉄道や造船関連企業など18社に計8万7804個の不正な部品を納めていたという。鉄道車両では数千両分、船では数百隻分に相当する。確かにすぐ安全性に直結するものではないが、東洋ゴムが失った信頼は計り知れない。 「【連載】なぜ、企業は不祥事を繰り返すのか?」 http://newswitch.jp/p/1694

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