三井住友海上がロボットに見いだす可能性
保険も続々登場の兆し
三井住友海上火災保険は15日、東京電機大学とロボット事業で産学連携協定を結んだ。損害保険会社がロボット分野で大学と提携するのは初めてという。今後、ロボット開発における事業リスク管理などで連携を重ね、先進的なロボットの開発や実用化を進める。
同日付で両者が都内で協定書に調印した。三井住友海上の佐々木靜専務は「ロボット事業におけるリスク管理や人と情報の交流を活発化させたい」と強調した。東京電機大の古田勝久学長も「ロボット事業で課題となるリスク管理対策や産学連携に関わる先進的な取り組みにしたい」と述べた。
今回の提携でロボット・医療機器の研究開発におけるリスク管理やビジネスマッチング、各種セミナーの開催などを進める。
東京電機大は作業支援用ロボットなどの開発を進めており、直近では林業用のロボット開発を進めている。提携の第1号案件として、三井住友海上は林業用ロボ開発における事業全体のリスク管理、関連企業とのマッチングなどを展開するという。
三井住友海上は福祉用ロボットによる損害を補償する保険を発売しているほか、経済産業省の産学官連携組織「ロボットビジネス推進協議会」で幹事会社を担うなど、ロボット事業に力を入れている。
ロボット産業の振興に向け、官民挙げて開発が進む中で、損害保険各社は介護や飛行ロボットなどに対応した保険商品の開発に乗り出した。ロボットは工場から住宅や建設現場などへ活躍の場を広げ、人間と接触する機会も増えている。こうした中、ロボットが引き起こす事故や賠償リスクへの対応は今後の課題となる。本格的なロボット時代到来に備え、損保各社も研究開発に力を入れる。
【事故・賠償リスク高まる】
三井住友海上火災保険は介護ロボに対応するために、医療機関向けに介護ロボ専用の保険商品を発売した。近年、医療現場では介護ロボットを導入する事例が増え、それに伴う事故などのリスクも高まってきた。専用商品によって現場の介護ロボットに伴う故障などのリスクに備える狙いだ。
東京海上日動火災保険は飛行ロボット「ドローン」に対応する保険を発売。ドローンの損害賠償リスクや機体の捜索費用まで包括的に補償するのが特徴。規制の設定など議論を巻き起こしているドローンだが、実際に300件の問い合わせがあるという。
ロボット産業は政府の成長戦略に位置づけられ、官民挙げて開発が進む。経済産業省などの調査によると、ロボットが製造現場だけでなく、今後はサービス分野に普及することを見込み、市場規模は2015年の約1兆6000億円から35年までに約9兆7000億円に増える見通し。この動きに伴い、損保業界も関連保険の引き受けが増えると見られている。
損保各社は経産省がまとめるロボットビジネス推進協議会にも参画。業界側の幹事会社を務める三井住友海上の北河博康公務開発部開発室課長は「損保会社は消費者とメーカーに接点がある業界。両社をつなぐ役割ができる」と強調する。
ただ、足元でみるとロボット専用保険商品は少ない。既存保険商品で対応できるからだ。例えばメーカー側の賠償リスクなら製造物責任保険を、ユーザー自身のリスクなら個人賠償責任保険、介護施設などで構造上の欠陥がある場合は施設所有者賠償責任保険がある。
【参入企業も多岐に】
また、ロボットと一言でいっても二足歩行のようなロボットから歩行などをアシストするロボットまで多種多様。参入企業も多岐にわたり、リスクも企業規模で異なる。市場自体が未成熟な中では、現在の保険商品ですら、慎重に対応しているのが現状だ。
とはいえ、中長期で市場がある程度成長し、企業数も含め整理統合されれば、保険の引き受けリスクも一定程度収束してくる。既存保険商品では対応できないリスクも増えてくる可能性が高い。
損保ジャパン日本興亜は特有のリスクに対応した新商品の開発を検討に入った。ロボット産業の将来に備え、各社の研究開発が活発化しそうだ。
(文=杉浦武士)
同日付で両者が都内で協定書に調印した。三井住友海上の佐々木靜専務は「ロボット事業におけるリスク管理や人と情報の交流を活発化させたい」と強調した。東京電機大の古田勝久学長も「ロボット事業で課題となるリスク管理対策や産学連携に関わる先進的な取り組みにしたい」と述べた。
今回の提携でロボット・医療機器の研究開発におけるリスク管理やビジネスマッチング、各種セミナーの開催などを進める。
東京電機大は作業支援用ロボットなどの開発を進めており、直近では林業用のロボット開発を進めている。提携の第1号案件として、三井住友海上は林業用ロボ開発における事業全体のリスク管理、関連企業とのマッチングなどを展開するという。
三井住友海上は福祉用ロボットによる損害を補償する保険を発売しているほか、経済産業省の産学官連携組織「ロボットビジネス推進協議会」で幹事会社を担うなど、ロボット事業に力を入れている。
損害保険各社、相次ぎ商品開発に乗り出す
日刊工業新聞2015年6月30日付
ロボット産業の振興に向け、官民挙げて開発が進む中で、損害保険各社は介護や飛行ロボットなどに対応した保険商品の開発に乗り出した。ロボットは工場から住宅や建設現場などへ活躍の場を広げ、人間と接触する機会も増えている。こうした中、ロボットが引き起こす事故や賠償リスクへの対応は今後の課題となる。本格的なロボット時代到来に備え、損保各社も研究開発に力を入れる。
【事故・賠償リスク高まる】
三井住友海上火災保険は介護ロボに対応するために、医療機関向けに介護ロボ専用の保険商品を発売した。近年、医療現場では介護ロボットを導入する事例が増え、それに伴う事故などのリスクも高まってきた。専用商品によって現場の介護ロボットに伴う故障などのリスクに備える狙いだ。
東京海上日動火災保険は飛行ロボット「ドローン」に対応する保険を発売。ドローンの損害賠償リスクや機体の捜索費用まで包括的に補償するのが特徴。規制の設定など議論を巻き起こしているドローンだが、実際に300件の問い合わせがあるという。
ロボット産業は政府の成長戦略に位置づけられ、官民挙げて開発が進む。経済産業省などの調査によると、ロボットが製造現場だけでなく、今後はサービス分野に普及することを見込み、市場規模は2015年の約1兆6000億円から35年までに約9兆7000億円に増える見通し。この動きに伴い、損保業界も関連保険の引き受けが増えると見られている。
損保各社は経産省がまとめるロボットビジネス推進協議会にも参画。業界側の幹事会社を務める三井住友海上の北河博康公務開発部開発室課長は「損保会社は消費者とメーカーに接点がある業界。両社をつなぐ役割ができる」と強調する。
ただ、足元でみるとロボット専用保険商品は少ない。既存保険商品で対応できるからだ。例えばメーカー側の賠償リスクなら製造物責任保険を、ユーザー自身のリスクなら個人賠償責任保険、介護施設などで構造上の欠陥がある場合は施設所有者賠償責任保険がある。
【参入企業も多岐に】
また、ロボットと一言でいっても二足歩行のようなロボットから歩行などをアシストするロボットまで多種多様。参入企業も多岐にわたり、リスクも企業規模で異なる。市場自体が未成熟な中では、現在の保険商品ですら、慎重に対応しているのが現状だ。
とはいえ、中長期で市場がある程度成長し、企業数も含め整理統合されれば、保険の引き受けリスクも一定程度収束してくる。既存保険商品では対応できないリスクも増えてくる可能性が高い。
損保ジャパン日本興亜は特有のリスクに対応した新商品の開発を検討に入った。ロボット産業の将来に備え、各社の研究開発が活発化しそうだ。
(文=杉浦武士)
日刊工業新聞2015年10月16日 ロボット面