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【TPPインパクト】中国の存在がちらつく医薬

「データ保護期間12年を死守できなかったことに失望している」(米国研究製薬工業協会)
【TPPインパクト】中国の存在がちらつく医薬

バイオ医薬品の知的財産保護に関する議論は難航した

 「バイオ医薬品のデータ保護期間が日本の再審査期間と同じ8年に着地したことは評価できる」。中外製薬の永山治会長兼最高経営責任者(CEO)はTPP大筋合意を受けてこうコメントした。

 日本では新薬の承認後、8年後に再審査が必要となる。承認前に行われる臨床試験では対象患者数が限られるため、実際の治療におけるデータを集めて安全性や有効性を検証することが目的だ。この間は後発医薬品の発売が許可されず、新薬が守られる。TPPではこれと同様の考え方であるデータ保護期間が実質8年とされたため、日本国内の薬事行政への影響はほぼないと考えられている。

 新薬メーカー、主戦場はあくまで日米欧

 国内製薬各社は日本経済全体の成長のためTPP交渉成立を望んできたが、バイオ医薬品のデータ保護期間については冷めた見方も出ていた。新薬メーカーは新興国を中長期の成長株とみなしているものの、主戦場はあくまで日米欧。今回、保護期間短縮を強硬に主張した豪州やマレーシアの市場は相対的に小さい。「そんなに短縮されるならば進出をやめますよ、となるかもしれない」(国内新薬メーカー関係者)。

 米国も豪州市場などへの見解は同様と推察される。それにもかかわらず交渉ではなかなか妥協せず、大筋合意後は「バイオ医薬品のデータ保護期間12年を死守できなかったことに失望している」(米国研究製薬工業協会)との憤りも聞かれた。

 背景には、将来TPPに参加すると考えられている中国の存在がありそうだ。米IMSヘルスは、中国医薬品市場が13―17年に年率14―17%成長し、17年の市場規模を1600億―1900億ドルと予測する。直近の経済減速で数字の下振れが予想されるが、増加基調は続くとみられる。

 成長著しい中国市場で知的財産保護を重視

 米ジョンソン・エンド・ジョンソンの医薬品部門でワールドワイド・チェアマンを務めるホアキン・デュアト氏は「現在の景気変動で中国への投資をやめることはない」としている。成長著しい中国市場で知的財産保護を重視したい新薬大手の意向は、米政府の交渉姿勢にも反映されていた公算が大きい。

 こうした各国の思惑が交錯する中で、TPP大筋合意に至ったのは大きな前進と言える。だが「新薬承認プロセスを一層効率化し、創薬にかかる期間がさらに短縮されるような環境整備を進めることではじめて大きなシナジーが生まれる」(永山中外製薬会長兼CEO)ことも事実。各国は今後も不断の努力が求められそうだ。
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
従来より短い期間で薬剤データが公開されることで割安なバイオ後続薬の製造が可能になり、高額なバイオ医薬品は値下げ圧力が強まる可能性もありそう。

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