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ルネサスが車載向けアナログ・パワー半導体テコ入れ

「BCD」で“マイコンだけ”の汚名を返上できるか
 ルネサスエレクトロニクスが、車載向けアナログ・パワー半導体のテコ入れに動きだした。切り札として用意したのは、三つの機能をワンチップに納めた半導体「BCD」だ。小型サイズを訴求し、自動運転や先進運転支援システム(ADAS)といった今後の主戦場で勝負を挑む。マイコンは強いが、アナログ・パワーはいまひとつ―。車載向け半導体ビジネスで、こう評されるルネサス。BCDは変身への契機となるか。

 【先端製品に期待】
 「多くの自動車メーカーから高い評価を得ている。数年かけて成長させていきたい」―。特定の製品について言及することの少ない柴田英利最高財務責任者(CFO)だが、BCDの先端製品に期待感をにじませる。

 BCDは、アナログ機能を担うバイポーラ(双極性)トランジスタ、デジタル情報を処理する相補型金属酸化膜半導体(CMOS)、電力を制御する二重拡散金属酸化膜半導体(DMOS)の3種類の半導体を一つのチップに形成する技術。三つを個別に用意する場合と比べ、小型化や信頼性を高められるのが特徴だ。

 BCDの基本技術は比較的古く、ルネサスのほか、スイスのSTマイクロエレクトロニクスなど競合他社も展開している。こうした中、ルネサスが車載向けBCDに期待をかけるのは、ライバルに先行して先端製品の開発に成功したからだ。

 具体的には半導体の性能を左右する回路線幅が90ナノメートル(ナノは10億分の1)と車載向けBCDとしては業界最短水準を実現。機能の異なる三つの半導体を個別に用意する場合と比べ、実装面積を半減できる。年初にサンプル出荷をはじめ、9月までに量産準備を整えた。

 この90ナノ製品が威力を発揮しそうなのが、自動運転やADASの分野だ。自動運転やADASではシステムの健全性が人の命に直結するだけに故障は許されない。半導体においても同じ機能を二つ用意する冗長化が不可欠になる。

 この際、頭が痛いのが、半導体のサイズが大きくなり、重くなってしまうこと。そこで小型化を実現したルネサスの90ナノ製品が役立つというわけだ。実際、ルネサスが手薄だった欧州の車メーカーからも比較的好調な引き合いを受けているという。

 【シェア5位程度】
 ルネサスの車載向け半導体は、マイコンが業界トップ水準のシェアを持つ一方、アナログ・パワー分野での存在感は低くシェアは5位程度。車のIT化が進む中、アナログ・パワーの重要性も増しており、同分野を強化できるかが、今後のルネサスの競争力に直結してくる。

 多田雅重ルネサス車載制御システム事業部事業部長は、「(金銀銅の)色は別にしてメダルを取れるポジションを狙う」とアナログ・パワー分野を強化する方針を強調する。実現のための「強力な武器」と位置付ける90ナノBCDを拡販できるか、業界の視線を集める。
(文=後藤信之)
日刊工業新聞2015年10月16日 電機・電子部品面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
世界初のICメーカーとされるフェアチャイルドにも身売り話が出るなど世界では半導体業界が急速に再編へ動き出している。悲願の黒字化を果たしたルネサスだが、経営権を握る官民ファンドの産業革新機構の出口戦略では、他社との連携は避けて通れない。今ある製品や技術のポートフォリオから、どこと組むのがいいか。その時まで少しでも実績を積み上げていくしかない。

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