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「金鳥」の大日本除虫菊、高品質のカギは人の五感

「金鳥」の大日本除虫菊、高品質のカギは人の五感

ベルトに乗って運ばれた薄板は打ち抜き機で渦巻き状に切り抜かれる

「金鳥」で知られる大日本除虫菊。創業の地である紀州工場(和歌山県有田市)では主力の渦巻き蚊取り線香や、小バエ除け関連などの商品を手がける。創業精神を引き継ぎ、人の五感を研ぎ澄ませながら高品質を実現するモノづくりに挑む。

創業者の上山英一郎氏は1888年、殺虫効果のある菊「除虫菊」を用いた線香を製造するため紀州工場を建設した。生家が生業としていたみかん農園の名残で、工場入り口には今も傾斜がある。奥に進むと、蚊取り線香の原料となる木材粉末や除虫菊粉末が積まれている。大きなはかりで計量後、ふるいにかけて粒度の小さい粉末から混ぜ合わせる。

染め工程を経ると、薄い板状に圧縮する。ベルトに乗って運ばれた薄板は打ち抜き機により、渦巻き状に切り抜かれる。打ち抜き機は大きな音を鳴らせてせわしなく動き、1セット2巻きとして1日10万セットを生産する。手巻き作業から機械化を図った1957年以来、保守を繰り返しながら稼働を続けている。

鹿島誠一工場長は「温故知新を重んじながら技術力を高めることが、製品の信頼につながる」と強調する。蚊取り線香は医薬部外品だ。品質を担保するため現場一人ひとりの注意力に抜かりはない。各工程で製品の色や状態を目で見て、硬軟や水分量を手で触って確認する。打ち抜き後の製品はリフトに運ばれ、乾燥工程に入る。水分量を約50%から10%以下に下げたところで梱包(こんぽう)作業に移る。

金鳥の蚊取り線香は「燃焼速度と有効成分の揮発量を最適化する」(鹿島工場長)。製造工程での圧縮状態や乾燥の程度を適切に管理することで、製品に火を付けるとゆっくり燃えながら効率よく殺虫できる仕組みになっている。長年積み上げてきた製造ノウハウを後世につなぐ。(大阪・中野恵美子)


【工場データ】

紀州工場は1888年(明21)に建設。工場の敷地面積は6000平方メートル。従業員数は約50人。現在、蚊取り線香12種類、その他の殺虫剤10種類を製造している。

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