電気を光に効率よく変換する「分子設計」、何に活用する?
京大が開発
京都大学化学研究所の梶弘典教授らは、電気を光に効率よく変換するための分子設計指針と、これに基づく有機分子を開発した。希少元素を使わず水素と炭素、窒素のみで構成する分子で、正負の電荷が対になった励起子の状態を変える「逆項間交差」を1秒間に1000万回以上の高速で行える。従来、熱として失われた電気を光に変換できる。有機ELデバイスの高性能化のほか、酸素センサーや腫瘍の探索などの生態応用が考えられる。
逆項間交差により、励起子の75%を占めるが熱として失われる三重項を、光に変換できる一重項を経由し蛍光を出す。通常、希少金属など重元素がないと逆項間交差が起きないが、電子の動きが変わりやすい状態を挟み軽元素のみでも高速の逆項間交差を達成した。
電子を与えるドナーと受け取るアクセプターを適切な距離に配置した分子設計で励起子の変化を可能にした。ドナーとアクセプターを少し傾けることで電子の動きが反転する。
実際に水素と炭素、窒素からなる化合物を組み合わせて分子を合成。同分子は固体だと酸素状態によらず強く発光し高輝度の有機ELができる。
溶液中では酸素がない場合に発光し、低酸素環境で発生するがん発見などへの応用も期待できる。
日刊工業新聞2020年8月4日