ファインセラミックスの顧客が求める「機能」とは

文=矢野友三郎(日本ファインセラミックス協会専務)「素材の相乗効果を高めていく」

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軽量で強度も高く、高温にも耐えられるファインセラミックスは航空機への採用拡大が期待される
 今やスマートフォンや自動車に欠かせない素材となったファインセラミックス。当協会は70社の会員がおり、世界市場の4割を占める実力を持つ。

 ファインセラミックスの耐熱性や耐食性、機械的強度などは金属や樹脂など他の素材と比べても特に高く、環境配慮の高まりから軽量素材などとして需要が伸びていくと期待される。炭素繊維で世界の先頭を行く東レがセラミックス繊維を開発していることも、注目度の高さを示している。

 ただ、日本と並んで高いシェアを持つ米国の市場は防衛や航空、医療分野を含めて用途のバランスが取れているのに対し、日本市場はスマートフォンや自動車の電子部品向けなど「電磁気・光学用」が7割を占め、偏重ぶりが目立つ。他方、コスト競争力に優れる中国製は日本製より品質は落ちるとはいえ、一定の水準に達しており、今後は中国製を積極採用したいと考える電機メーカーもある。日本企業は現状に甘んじるのではなく、攻めの戦略が必要になっている。

 今、日本企業に求められているのは従来通り得意のすり合わせ技術で品質を磨いていくだけでなく、顧客の声を聞くことだ。素材産業は製鉄業なら鉄のみ、セラミックスメーカーならセラミックスのみと事業領域を自ら限定する面がある。だが、顧客が求めているのは素材そのものではなく、「機能」だ。経済産業省が実施したヒアリングでは自動車メーカーは素材産業に対し、垣根を越えた連携によって複合材料や異種材接合を開発し、それぞれの素材の相乗効果を高めていくことを期待している。

異業種が集う場を


 セラミックスを炭化ケイ素繊維で強化した航空機用エンジンを開発し、20カ国から6000基を受注している米ゼネラル・エレクトリックはこの流れで先行している。またファインセラミックスは高価だからと敬遠されているのなら、耐熱性改善が求められている部分だけにファインセラミックスを使えば、コスト上昇を抑えられる。
 
 気がかりなのは東日本大震災を機に「絆」の重要性が叫ばれるようになったものの、この2―3年は企業も省庁も横連携が弱体化しているように見受けられることだ。この横連携が活性化して材料同士の相乗効果が発揮できるようになれば、堰(せき)を切ったようにセラミックス市場は広がるはずだ。
 
 当協会が今年発足した「革新製造プロセス研究会」は業界の垣根を越えた異業種、異分野の企業が集う「アリーナ(連携の場)」の提供をコンセプトにしている。またこの春には米国先進セラミックス協会(USACA)と提携した。2カ国間で国家開発プロジェクトの情報交換などから始め、素材開発などでも連携を深めていきたい。
【略歴】矢野友三郎(やの・ともさぶろう)筑波大大学院博士課程修了。通商産業省(現経済産業省)入省後、インドネシア政府の政策アドバイザーなどを経て、14年日本ファインセラミックス協会専務理事。大分県出身、61歳。

日刊工業新聞2015年10月12日 パーソン面

COMMENT

村上毅
編集局ニュースセンター
デスク

素材の特性に合わせて、適材適所をどう図るか-。これは機能とコストとの見合いでもある。同じスマホや自動車でも求められる素材は一概ではなく、高級品から汎用品までより細分化されているように思う。素材ごとが“切磋琢磨”していくことはもちろんだが、業際分野をうまくつなぐようなコーディネート機能が求められそうだ。

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