ゴミ焼却施設はグローバルビジネスへ育つか!買収シナジーの準備整う

日系プラント各社、東南アジアに熱視線「2020年に1兆円市場」

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日立造船が中国の海南省海口市に納入したゴミ焼却プラント
 日系のゴミ焼却プラントメーカーが、世界市場で攻勢に出ている。日立造船やJFEエンジニアリング(東京都千代田区)などが、相次いで欧州の名門企業を買収。国内での焼却プラント新設が頭打ちとなる中、海外に軸足を移している。ゴミ焼却プラントは中国や東南アジアなどの新興国に加え、欧州や北米の先進国でも需要拡大が期待できるインフラ分野だ。一連の買収劇で業界再編は一段落。日系企業の戦略は買収企業とのシナジーを武器に、世界市場で覇権を争うフェーズに入った。
 
【東南ア20年「1兆円」−国内市場は縮小】
 ここ数年で日本企業による欧州企業の買収が加速している。2010年に日立造船がスイスのAE&Eイノバ(現日立造船イノバ)、14年にJFEエンジが独スタンダードケッセル・パワーシステムズホールディングス、新日鉄住金エンジニアリング(東京都品川区)が同フィジア・バブコック・エンヴァイラメントを手中に収めた。

 JFEエンジの安藤靖人常務執行役員は「世界6強のうち、3社を日本企業が傘下に入れた」と指摘する。世界市場における日本メーカーの競争力は格段に向上。国内2強の日立造船とJFEエンジが買収に動いたことで、海外市場でのつばぜり合いは激しさを増す。各社がこぞって海外企業のM&A(合併・買収)に走るのは、国内市場の縮小が主因だ。日本の一般廃棄物は12年時点で75%が焼却で処理され、埋め立てはほぼ皆無。一方で欧米の焼却率をみると、欧州連合(EU)が22%(10年)、米国が12%(12年)と格段に低い。東南アジアなどの新興国では、一部地域でようやく需要が出始めた。
 
【廃棄物減少傾向】
 日本国内では人口減少やリサイクル意識の高まりで、廃棄物量は減少傾向にある。国内の焼却プラントは更新案件はあるが、新設需要は頭打ちの状態だ。JFEエンジの安藤常務執行役員も「国内の更新案件を取りつつ、成長エンジンは海外にある」と強調する。海外は中国、EU、東南アジアが有力市場だ。EUは99年に「埋め立て規制に関する指令」を採択し、16年までに廃棄物の埋め立て比率を95年比で65%削減する方針を策定。先進国で群を抜いた潜在需要を持つ。焼却施設の整備が遅れている英国や東欧では、新設ラッシュが期待できる。

 一方で東南アジアも、インドネシア、タイ、ベトナムの都市ゴミ処理潜在市場は経済発展と人口増大に伴い、20年に1兆円市場になると言われる有望市場。ここでの受注獲得が、日本企業の今後の成長を左右する。最大需要地の中国は、実入りの大きな建設部分を現地企業に発注するケースが多く、収益性の面で多少難があるとされる。中国事業に力を入れる川崎重工業は、現地のセメント大手と合弁会社を設立して市場開拓を進めている。
 
【役割決め稼ぐ】
 日立造船は2019年度に海外でのゴミ焼却施設関連で売上高1000億円を目指す。その大半をイノバが稼ぐ見通しだ。今後市場が拡大するアジア地域を日立造船、欧州を中心とした地域をイノバが担うという「役割分担」で躍進を狙う。イノバはすでに世界的な受注実績を持つがEPC(設計・調達・建設)が主。メンテナンスなどのアフターサービスや施設運営を獲得し、恒常的な収入を確保することが課題となる。焼却時の熱を利用した発電や造水、メタンガス精製といったメニューを盛り込んで差別化することも必要だ。
 
【世界的な受注戦略】
 そのためイノバを通じ1月にプラントメンテナンスの独HNPクラフトワークステクニックを買収。生ゴミを分別してメタンガスを生むために必要な技術を持つ独MTバイオメタンの資産も3月に譲り受けた。日立造船が持つ技術や運営・サービスのノウハウも活用し「イノバは年間700億円程度の受注を維持しつつ、東欧地域やアフターマーケットを開拓してほしい」(三野常務執行役員)と期待を寄せる。日立造船は今後もM&Aや提携に積極的な姿勢。イノバと連携して世界的な受注の拡大を図る。
 
【啓発活動カギ】
 JFEエンジがスタンダードケッセルを買収したのは、欧州市場とともに東南アジア開拓の足がかりにするためだ。東南アジアでは、焼却炉に併設する発電設備の発電量を大きくできる日量1000トン規模の大型炉の需要が顕著。設備を自治体単位で運営する日本では同200―300トン程度で十分なため、日本企業は大型炉の実績に乏しい。スタンダードケッセルは大型炉の実績が豊富で「設計ノウハウなどを技術部門の一体化の中で吸収しながらやる」と安藤常務執行役員は話す。
 
【タイなど有望地域】
 ゴミの焼却処理は1人当たり国内総生産(GDP)に比例し、3000ドル付近で需要が顕在化すると言われる。4万ドルを越すシンガポールでは、すでに更新時期を迎えるプラントもある。1万ドルに達するマレーシアでも「大型の発電設備付き焼却炉の話が出ている」(同)という。

 今後はタイやインドネシア、インドなどが有望地域。焼却処理の普及には「現地での啓発活動がカギ」を握る。コストをかけてプラントを建設する概念がないためだ。日本政府はインフラ輸出などを狙い、東南アジア各地で事業化調査(FS)を展開。JFEエンジはこのほど、インドのベンガルール市でFSに着手した。
 

日刊工業新聞2015年04月09日最終面「深層断面」から一部抜粋

COMMENT

山口豪志
Protostar Hong Kong
董事長

ゴミの未来。こういう視点での環境エコも興味深い。

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