『モノを売って、はい終わり』の製造業は苦しい。コロナ禍で顧客から見放されない会社とは?

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デジタルトランスフォーメーション(DX)―。コロナ禍において製造業の戦略の中心としてこの言葉が、かつてないほど多く語られるようになった。顧客とのコミュニケーションが重視され、売り切りじゃなく付帯サービスがずっと続く。いかに体験を売るかが重視される。『モノを売って、はい終わり』の企業は苦しい。"モノづくり" という言葉に逃げ込むなかれ。

旭化成はなぜDXの主要テーマに「デジタルマーケティング」を据えるのか。マーケティング&イノベーション本部の宇高道尊マーケティング統括部長は、「BツーBビジネスを行う企業には、マーケティングの思想自体がなかった。経験則に頼るやり方を科学的なものに変えるにはデジタル技術は必須のツールだ」と指摘する。

今、自動車をはじめ顧客産業で技術革新が進み、ロボットなどの新市場も拡大している。経験を積んだ営業マンの肌感覚も重要だが、それだけでは幅広い社会の変化を全ては読み解けない。

科学的なマーケティングはデータ分析が基盤であり、最も頼りになるデータは営業担当者の中にある。そこで旭化成は、営業担当と顧客のコミュニケーション情報を吸い上げて見える化するため、顧客情報管理(CRM)システムの導入を始めた。「顧客の機密情報は守りつつ、部署の壁を越えてデータを共有し、資産として活用する」(宇高部長)。

例えば、自動車向けの多様な製品群の担当者らが持つ情報を分析すれば、自動車産業が進む方向を読み解けるかもしれない。

データ活用は研究・開発本部との連携が深く、河野禎市郎インフォマティクス推進センター長は「顧客情報が集まれば集まるほど、(データを用いて素材開発を効率化する手法の)マテリアルズ・インフォマティクスも強くなる」と期待する。

一方、CRMシステムは、営業担当者のコミュニケーションも助けられる。新型コロナウイルス感染症の影響もあり、顧客との対面は新規顧客や重要な時に絞られる見込み。同システムに記録された営業活動情報から“直接会うべきタイミング”を分析することなども想定する。

またデジタル技術を使って顧客とつながる方法を模索することもデジタルマーケティングの仕事だ。現在、今秋に開催予定の自動車関連製品・技術のオンライン展示会を鋭意企画中で、「デザインや見せ方を工夫し、ビジネスのマッチング性が上がるようにしたい」(宇高部長)と話す。

現在は情報分析や顧客との接点づくりによる営業活動の支援が先行するが、宇高部長は「DXを使って、(営業活動で)付加価値を付ける“攻めのツール”も構想中だ」と明かす。例えば、知的財産情報(IP)のビッグデータを分析して得られる情報や、顧客の求める機能や成形方法に適した部品の構造データを、素材と一緒に提供すれば、素材の付加価値も上がる。

DXで成長の芽を見つけ、マーケティング・営業からも新事業の創出を加速させる。

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