《加藤百合子の農業ロボット元年#01》「工業」の知見をどこまで引き込めるか

地方で新たな稼ぎ頭を創出へ

 地方創生農林水産業ロボット推進協議会の会長を務めている。農業シンクタンクとしてエムスクエア・ラボを運営する中で、前職である産業用ロボットの経験を活かし、世界をリードしている工業界の知見を農林水産業に活用し生産性向上を目指す取り組みを始めた。

 発足は今年1月。メンバーには、安全学の権威である明治大学の向殿政男名誉教授はじめ、東京農工大学の副学長堤正臣教授、民間として産機メーカーや農業ロボット開発会社、オブザーバーとしてファナックや産業技術総合研究所(産総研)の方にも参画いただいた。

 もちろん、長年の開発経験から得られた知見を提供いただくため、農機メーカー各社、オブザーバーに全農や生研センターにも参画いただき、農林水産業と工業界の融合によるイノベーションを起こそうと企てている。

 本年度は、農林水産省から農林水産業におけるロボット導入実証事業を受託し、博報堂と事務局を構成。主に、(1)農業業務へのロボット導入分析、(2)安全のルールづくり、(3)若年層や他産業の方に農業へ関心を持ってもらうためのムーブメントづくり、を遂行している。

 (1)では、主な品目について業務分析を実施中だ。業務プロセスのどこにロボットを導入すれば投資対効果が表れるのか、評価指標は売り上げが上がるかコストが下がるかと非常に明快だが、今後の人手不足(労賃の高騰や労働力を確保できない状況)を加味する必要がある。

 静岡のワークショップで見た可能性

 そして最も難しいのは、ロボットを導入することで2、3のプロセスが同時に実行できたり、明らかな軽労化が見込まれたり、マーケティングと連動したりすることが可能となることをどう評価するか。この点、今回の実証事業で開発した農業用ロボットが複数の生産現場に実際に導入され、具体的な意見や課題が出始めているので、今後何回かに分けて紹介していく。

 今回は、先日静岡市で開催した農工連携イベントを紹介する。農業者、県の農機研究者、そして工業界の方々にお集まりいただき、「除草」をテーマにロボットを検討するワークショップを開催した。静岡県はものづくり企業が多数存在するので、工業者からは輸送機器、製紙、表面処理、射出成型等々、さまざまな技術を有していた。

 結論から申し上げると、非常に盛り上がり、ファシリテーター役の宇都宮大学尾崎教授からは、特許もとれると高評価を頂いた。小さい地域でのイベントではあるが、農工連携による新規事業創出を確信できた。今年は農業ロボット元年。世界と闘う中で磨かれた他産業のもつ技術や知見を農林水産業につなげ、地方での新たな稼ぎ頭創りを仕掛けていきたい。

<プロフィル>
 加藤百合子(かとう・ゆりこ)エムスクエア・ラボ代表
 かとう・ゆりこ 98年(平10)東大農学部卒、英国で修士号取得後NASAのプロジェクトに参画。帰国後は、精密機械の研究開発に従事するも、子育てから農業の大切さに気付き09年エムスクエア・ラボを設立。12年青果流通革新「ベジプロバイダー事業」で政投銀第1回女性新ビジネスプランコンペ大賞受賞。



 ※次回は10月21日(水)に公開予定

日刊工業新聞2015年10月07日 ロボット面

加藤 百合子

加藤 百合子
10月07日
この記事のファシリテーター

TPPも妥結になりましたし、人手不足は益々深刻な状況になるばかりということで、農業もいよいよ変革の時です。先んじて世界と闘ってきた工業界と交わることで、イノベーションが起こり、世界をリードする新しい農業事業があちこち生まれてくるよう企画していきたいと思います。

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明 豊
明 豊
10月07日
今日からファシリテーターの加藤百合子さんの「農業ロボット元年」の連載がスタートします。もともと加藤さんは東大農学部と言っても農業機械が専門で、この分野ではうってつけの人です。

  

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