人類の宇宙進出に貢献なるか。「人工冬眠」実現へ一歩

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写真はイメージ

筑波大学医学医療系の桜井武教授らはマウスの人工冬眠(用語参照)に成功した。マウスに薬剤を投与し、脳の一部にある神経細胞群を興奮させると、マウスの体温と代謝が数日間にわたって著しく低下することを突き止めた。通常は冬眠しない動物を冬眠に似た状態にできたのは初めてという。救急搬送などを想定した人間の人工冬眠の研究が進むことが期待できる。理化学研究所との共同研究。成果は英科学誌ネイチャー電子版に11日掲載された。

動物実験で多く使われるマウスなどは冬眠しないことから、冬眠のメカニズムはこれまで明らかになっていなかった。

桜井教授らは、マウスを使った実験で、脳の視床下部の一部にある神経細胞群が体温と代謝を制御することを発見した。この神経細胞群を「Q神経」と名付けた。マウスに薬剤を投与し、Q神経を刺激すると低代謝状態にできた。

哺乳類は体温の設定温度(37度C弱)を保とうとしてエネルギーを消費して発熱している。実験では、外気温を23度CにしてマウスのQ神経を刺激すると、体温は1時間後に24度C程度にまで低下し、90分後には外気温近くまで低下した。体温が下がっている過程で尾からの熱の放出が認められた。48時間後もまだ平均25度C程度を保っていた。外気温をさまざまに変えて計測。体温の設定温度を理論的に算出したところ、マウスの体温の設定温度が低下していることが分かったという。元に戻った後もマウスに異常はみられず、冬眠に似た状態だったと結論づけた。同一のマウスに複数回実施しても異常はみられなかったという。

【用語】人工冬眠=哺乳類の中には、冬季の低温や飢餓などエネルギー源が乏しい状況に陥った際に、自らの代謝を下げてエネルギー消費を抑えることで生存する種がいる。この低代謝状態を一般に休眠と呼び、季節性かつ1日以上続く休眠を冬眠と呼ぶ。人工的に冬眠状態を作り出すことができれば、人間のように冬眠しない動物でも代謝を下げて酸素・エネルギー需要を安全に低下させることで、重症患者を搬送する際、臓器・組織が受けるダメージを最小限に食い止められる可能性がある。将来は人類の宇宙進出に貢献する技術となる可能性もある。

日刊工業新聞2020年6月12日

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人工冬眠 筑波大学

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