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変わりゆくデザインの役割、“中心軸”をコンセプトにした取組みとは

日本の戦後のデザインは、1950―60年代にかけて「生活復興」をテーマに掲げた作品が評価された。70年代に入ると「豊かさ」を基準とするデザインに移行し、横並び主義から自己実現主義へと大きくかじを切っていく。

そうした中、デザイナーやプランナーが流行の最先端の場である東京・六本木(飯倉片町)に集い始め、生活の中のデザインそのものを研究・提案する飯倉プロジェクトが、76年に立ち上がった。そこでは「デザイン運動の中心軸(アクシス)を創るための試み」という明解なコンセプトが練り上げられ、5年後の81年にはアクシスが設立される。

当時の位置づけはデザイン情報・ネットワークのシンクタンク。デザイン性の高い専門店などで構成された複合商業施設を通じ、生活における包括的なデザインの重要性を提案していくのが目的で、社会貢献という発想に基づいていた。

企業理念は「デザインのある生活」だ。日常生活に深く根ざしたデザイン、商品、活動を知ってもらうことで、人々の生活に豊かさと幸せをもたらしたいとの願いを込めた。

約40年が経過した現在の主力事業はAXISビルの運営やデザイン誌「AXIS」に代表されるメディアの発行、デザインコンサルティングなどで、発足時と同様にAXISビルを拠点にして活動を展開している。

ただ、デザインは生活や社会に広く浸透し、意義も役割も変わってきた。このため今では、「デザインのある生活と社会の実現」という企業理念の下、人と衣食住や人とビジネス・環境をデザインでつなぐ「よりよくつなぐデザイン」を実践している。設立当初のコンセプトは基本的に変えず、「デザイン提案体」として企業・組織に対するデザインソリューションの提案や顧客体験に力を入れ、感性や共感の大切さを重視している。

デザイン界に寄与した個人や団体を顕彰する「2015毎日デザイン賞」では特別賞を受賞した。コンセプトである“中心軸”にこだわった長年の普及活動がデザインの本質を見極め問題解決手法としてのデザインを生むこととなり、高評価を受けた。

(秋山浩一郎・デロイトトーマツベンチャーサポート第4ユニット)
日刊工業新聞2020年6月12日

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