ノーベル生理学医学賞「大村智」功績早わかり

ゴルフ場で微生物発見、毎年5万人の失明防ぐ

 利根川進氏、山中伸弥氏に続き日本人として3人目の快挙となるノーベル生理学医学賞を受賞した北里大学の大村智特別栄誉教授。受賞テーマは「寄生虫によって引き起こされる感染の治療に関する発見」。かつてアフリカでは毎年5万人以上が失明していたが、発見した抗生物質は失明原因となる寄生虫の増殖を抑え感染症の拡大を防いだ。
 
 南アルプスを望む山梨県韮崎市で農家の長男として生まれた大村氏。高校時代までは父を手伝ってよく働き、スキーのクロスカントリーなどのスポーツにも打ち込んだ。入学した山梨大学で有機化学と出会う。だが、当時は研究者になるつもりはなく、卒業後は都立高校の夜間部の教師になった。
 
 そこで力不足を感じたことが転機に。「もっと勉強が必要だ」と痛感し、東京教育大学(現筑波大学)の研修生になる。そこから研究への熱が入り始める。教師を務めながら、東京理科大学大学院修士課程に入学。修士号を取り、山梨大工学部の助手になった。そこで魅せられたのが微生物の研究だ。65年には、感染症の研究で有名な北里研究所に移る。

 70年代に入り、さらに研究を深めるために留学を決意する。米ウェスリアン大学のティシュラー博士の研究室に客員教授として就き、微生物の探索を始めた。そこで大きなネットワークを作ることになる。

 だがわずか1年あまりで北里研究所に呼び戻されることになった。そのため留学先のティシュラー氏が研究所長を務めていた米メルクが年間8万ドル(当時約2400万円)の研究費を3年間提供してくれることになった。業績だけでなく、相手の利益を考えた方式は「大村方式」と呼ばれ、産学連携の先駆けになった。

 ヒトの薬の研究は競争が激しいため、家畜などの動物薬に狙いを定めた。こうした中で、静岡県伊豆のゴルフ場に隣接した土地から取れた微生物が産生する化合物「エバーメクチン」を79年に発見。81年に同化合物をさらに改良し米メルクが「イベルメクチン」として動物薬にして販売した。

 イベルメクチンは線虫やダニなどの寄生虫にのみに作用し神経伝達を阻害する。動物の場合は脳関門というバリアーによって防がれるために動物にはこの薬が作用せず、寄生虫のみに効く作用機序となっている。
 
 その後、オンコセルカ症と呼ばれる寄生虫に感染したヒトの薬として使えることが分かった。同病はヒトの体内に入り込んだ寄生虫が猛烈なかゆみや失明などの症状を引き起こす。このイベルメクチンは250億円のロイヤルティー収入を北里研究所にもたらした。
(文=冨井哲雄、藤木信穂)

日刊工業新聞2015年10月06日ノーベル賞特集から一部抜粋

明 豊

明 豊
10月06日
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大村氏いわく研究の原動力は、
「たくさん失敗しても、一つびっくりするくらいうまくいくとその時の喜びは何にも代え難い。その後は何度失敗しても怖くない。成功する人は他人の2倍、3倍と失敗している。若い人には失敗を恐れないことを伝えたい。また私自身大変な負けず嫌いだ。大学時代は長距離スキーに打ち込んだ。とても厳しいスポーツで、研究での失敗などたいしたことはない」という。
 

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