人型ロボットの開発は止まってしまうのか?

産業応用と技術革新の間でNEDOが抱えるジレンマ

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弓取部長は「NEDOの投資は数年後の実用化が前提」と話す。
 日本の人型ロボット開発が厳しい局面にある。米国防高等研究計画局(DARPA)が開いた災害対応競技会(DRC)で、世界最高のロボットでも実用化には遠いことを示してしまった。日本では人型よりも用途ごとに特化した専用ロボの開発にかじが切られている。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)はDRCの後継大会を日本で開き、2020年のロボットオリンピックの柱に据えようと構想していた。ロボ五輪に向けた競技検討についてNEDOロボット・機械システム部の弓取修二部長に聞いた。
 
 ―20年のロボ五輪は18年にプレ大会を予定しています。開発期間がありません。DRCのように人型用の競技を踏襲しますか。

 「開発期間を考えると16年には競技を周知する必要があり、ロボット革命イニシアティブ協議会で議論中だ。ロボ五輪では産業応用を見据えたロボットを発信する。企業が参画し、日本が各ロボットビジネスのプラットフォーム機をとることが狙いだ。人型用の競技にはならないだろう」

 ―最先端技術を統合する人型は日本のお家芸です。現在も優秀な人材を集める研究領域をしぼませませんか。

 「日本が人型の開発を止めることはあり得ない。ただNEDOが支援するにはジレンマがある。我々の開発投資は数年で実用化することが前提だ。人間と同じ大きさで二足歩行する人型は20年時点でも実用化は厳しいだろう。企業の開発者に聞いても投資効果を示せる段階にはないようだ。粛々と開発を続けて技術を積み上げることが重要で、我々がミスリードすれば、その継続も危うくなる。我々は要素技術開発や人材育成などを支援する。科学としての研究投資にも期待したい」

 ―五輪はスポーツのイメージが先行してしまいます。人型でないロボ五輪の競技とは。
 「スポーツはミスリードだ。ロボットが生活や産業に役立つ姿を示したい。トヨタのHSRのように生活を支援できれば腕は1本でもいい。DRCのように、国がプラットフォーム機を買い支えて研究者に提供すれば、企業は量産コストを計れ、プラットフォーム機として用途開発を促せる。目にもとまらぬ速さで、機械を組み立てるロボットなどは見た目も面白く、技術としても高度だ。ピッキングシステムとして市場も見込める。本年度中に議論をまとめて競技を提案する」
 
 【記者の目/ロボット政策の手腕問われる】
 DRCの競技は現場に即していないと災害対応ロボの研究者から批判が挙がった。DRCの後継を狙った「ジャパンバーチャルロボティクスチャレンジ(JVRC)」では、災害対応の研究者が競技を設計したため人型ロボには難しい課題が並ぶ。JVRCをそのままロボ五輪に展開する路線は見直され、ゼロから競技を設計する。国際大会として世界の研究者を巻き込み、市場性を示して企業の参画を呼び込む。極めて難しいが、米国と同じ轍(てつ)は踏めない。ロボット政策の手腕が問われる。
(聞き手=小寺貴之)

(2015年10月05日 機械・航空機)

COMMENT

政年佐貴惠
名古屋支社編集部
記者

災害ロボットでいえば、日本では東日本大震災を経験したからこそ「何でもできるロボットではなく、一つのタスクを確実にこなせるロボットを複数作ろう」という方向にシフトした。一方で人型ロボット研究への投資が縮小されれば、これまで日本が優位に立っていた同領域で韓国や米国に遅れを取る可能性も否定できない。基礎研究がなければ実用化もできない。国としてロボットを成長戦略に掲げる今、基礎研究と実用研究にどう投資していくか議論が必要だ。

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