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TDKが仏アルストムから洋上風力向け大型ネオジム磁石を初受注

受注動向次第では成田工場の増強も検討へ
 TDKは洋上風力発電設備の中核部材である大型ネオジム磁石を初受注した。仏アルストムからの受注案件で、欧州や米国に建設する出力5000キロワット超の洋上風力に組み込む。受注額は4億円前後。TDKは電子部品事業が好調である一方、磁石は苦戦し収益拡大の足かせとなっていた。今回の受注を機に洋上風力発電市場を深耕。収益力を改善し、安定成長に向けた柱にする。

 受注したのは希少金属ネオジムを使った金属磁石で、受注数は数基分。成田工場(千葉県成田市)で全数を製造する。一部納入を開始し、2015年度中にはすべての磁石を納入する計画。洋上風力1基当たりの磁石の重さは大きいもので1トンを超える。今後の受注動向次第では成田工場の増強も検討する。

 洋上風力発電は欧州や米国を中心に、世界で複数の建設プロジェクトが動いている。TDKは今回の受注で、洋上風力向け磁石の採用が広がる可能性が高まった。中国など競合メーカーと比べて品質に優れている点を訴求し、さらなる受注につなげる。

 TDKの14年度の磁石を含む磁気応用製品事業の売上高は約3700億円と全体の34%を占める。磁石分野では自動車や家電、産業機器向けにフェライト磁石と金属磁石を製造する。金属磁石は希少金属の価格変動が大きく、14年度に生産合理化や設備の減損処理を行うなど、てこ入れを進めていた。

ネオジム使用量半減する技術を開発


2014年10月3日付


 TDKはハイブリッド車(HV)用モーターなどに使われるネオジム磁石について、基幹材料のネオジム使用量を従来比半減する技術を開発した。代替材を自社開発し、従来品と同等の特性を維持することに成功した。HVなどの普及拡大でネオジム磁石の需要が急増。一方、レアアース(希土類)のネオジムは調達リスクが高いことから、使用量を減らし、磁石を安定供給する体制整備が課題となっている。TDKは数年以内にネオジムを含む希土類を使わない磁石の開発を完了させ早期実用化を目指す。

 ネオジム磁石はネオジムと鉄などを混ぜた合金でつくる永久磁石の一つ。磁石の中で磁力が最も大きいとされる。HVのほか電気自動車(EV)、エアコン、ハードディスク駆動装置(HDD)用モーターなど幅広い分野で採用が広がっている。

 TDKが開発した代替材を使った磁石は、磁石の強さを示す最大エネルギー積が40メガガウスエルステッド、磁石の特性が変化する温度が300度C。ネオジムを使った従来品と同等の特性を維持した。ネオジム磁石の添加材として知られる希土類のジスプロシウムなども使わない。

 重量ベースで3割を占めるネオジムの使用量を半減した磁石の開発は業界で初めて。同社が得意とする磁性材料技術や構造設計技術を応用した。

 富士経済の調査によると、ネオジム磁石の世界市場規模は20年に11年比2・5倍の9万トンに広がる見通し。ただネオジムは中国からの供給依存度が高く、安定調達に課題がある。ネオジム磁石の需要が拡大する中、磁石を安定供給するにはネオジムをはじめとする希土類の使用量を減らす開発が競争軸の一つになっている。

 TDKのネオジム磁石を含む磁気応用製品事業の13年度の売上高は、前年度比8%増の3643億円で電子部品事業に並ぶ中核事業の一つ。ネオジム磁石については車のほか産業機器、鉄道、風力発電システム向けとして拡販を狙っている。
日刊工業新聞2015年10月05日1面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
技術力はあるのだから、あとは前線の営業力。アルストムをきっかけに受注量を増やし収益安定化を。大型であれば、ネオジム使用量半減の技術も効いてくるだろう。

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