ドローン企業、コロナ禍で問い合わせが倍増した理由
インフラ点検や物流分野向けの飛行ロボット(ドローン)に強みを持つブルーイノベーション(東京都文京区)。複数ドローンや無人搬送車(AGV)を遠隔で制御し、統合管理するプラットフォーム開発も自前で手がけ、物流会社やITソリューション会社、金融機関などと提携を加速させている。新型コロナウイルスの感染拡大で巣ごもり消費など社会環境が変わる中、ドローン市場への影響はどうか。熊田貴之社長に聞いた。
―新型コロナ感染防止の外出自粛要請でドローン展示会の多くは開催中止になりました。商談や営業活動にも支障が出ているのでは。
「商談はほぼ全部、ビデオ会議システム『ズーム』で行っている。お客さまは官公庁や大手が大半なので、IT対応インフラも比較的整っているのが強み。展示会中止で当初は営業ができなくなるのではないかと心配したが、ふたを開けてみると問い合わせ件数は前年同期比でほぼ2倍に増えた」
―理由は何ですか。
「ドローンの活用イメージや利点がお客さまにとっても明確になったことだろう。問い合わせも単に件数が伸びただけでなく、相手が変わった。昨年までは総務部などからの問い合わせが多かったのに対し、今年は工場の機械本部第一課長というイメージ。物流倉庫や製鉄所、石油化学プラントの点検、24時間監視のようにドローンを何に使うか、どの場所に使うかが明確になっている」
―巣ごもり消費やネット注文が伸びています。ドローンの世界でも売れ筋や開発方向に変化はあるでしょうか。
「測量と農業、空撮分野は現在ほぼ飽和したと言っていいだろう。対してインフラ点検や倉庫の在庫管理、物流、警備などは今後が普及期だ。特にインフラ点検。国内のインフラは約50年がたつ老朽化した施設が多く、高度スキルを持つ点検業者も定年で辞めている。ドローンでこのギャップを補いたい」
―物流関係も活躍余地が大きそうです。
「新型コロナでサプライチェーンがグローバル一辺倒から、国内回帰に変化している。ドローンにとって市場拡大のチャンスだ。経済活動範囲が狭まり、物流は小口や個人宅、多品種化の傾向が強まるだろう。宅配人数には限りがあり、まとまった一定量の荷物を決められた拠点にまず運び、宅配業者や個人がそこへ受け取りに来るモデルが考えられる。ドローンポートはその拠点として活用できる。過疎化対策や高齢化対策で、国内各地にスマートシティーの動きが起きているのも追い風だ」
―ドローンは中国製が市場の過半を押さえています。日本企業が巻き返すチャンスはありますか。
「中国は低価格のドローンやロボットなどハード機器に強い。対してソリューションサービスなど応用分野は日本が強いと言える。制御に必要なセンシングやセンサー技術も日本が優位にある。ドローンの仕様要求は地方色が強く、東北のスキルが九州で役立たないこともしばしばだ。屋内や狭い倉庫での飛行技術は日本の独壇場。悲観はしていない」
【記者の目/VBに二極化傾向強まるか】
新型コロナ感染拡大による世界的な経済縮小で、新興市場企業では株価を大きく下げたところも多く、同社のようなベンチャーには逆風に映る。しかし熊田社長は「当社への資本提携や協業の申し出はかなり増えている」と自信を示す。ベンチャーの中でも淘汰(とうた)が始まっており、ドローン市場でも伸びる会社と落ちていく会社の二極化が強まるのではないか。(編集委員・嶋田歩)