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伝統技法を応用したテーブル・デスク、工芸品の価値を身近に

日本の茶室に見られる数寄屋造りがコンセプト
伝統技法を応用したテーブル・デスク、工芸品の価値を身近に

九銘協が手がけるテーブル・デスク「ガイドラインシステム」

九銘協(福岡市東区、峯公一郎社長、092・641・7750)は、木材販売を主力に加工や塗装も手がける。インテリアやエクステリアに使われる銘木の高級材など取扱品目が多く、加工・塗装まで一貫して対応できるのが強み。現在、力を入れるのが「ガイドラインシステム」と名付けたテーブル・デスクだ。

九銘協は協同組合の子会社として設立。製品は座敷の床の間など意匠性の高い場所を手がける職人に使われている。同社が加工を始めたのは、加工ができる職人の減少などに対応するためだ。技術者を採用して技術を伝承し、「工芸品的な価値を持つ製品」(峯社長)を作ってきた。

時代とともに生活様式が変化し、床の間を設ける住宅が少なくなった。そのため床の間用の木材は需要が減っている。一方で、店舗など事業所に使いたいというニーズは強い。同社は設計事務所やデザイナー、工事業者などと協力して和洋を問わず多彩な空間の創出を支えてきた。

テーブル・デスクにつながる仕事としては飲食店の顔とも言えるカウンターの実績も多い。同社がテーブル・デスクを開発した背景には自社製品を持ちたいという思いがあったためで、2016年に試作品が完成した。

ガイドラインシステムは日本の茶室に見られる数寄屋造りを開発コンセプトに取り入れ、「質素で無駄を省いたシンプルな美しさ」(同)を求めた。例えば、斜め上から見ると薄く見え、軽やかな印象を与える。天板は好みに合わせて選べる。

木材の反りを防ぐ機構には木組みと呼ばれる伝統技法を応用。天板端部の溝に鋼製フレームを組み込み、使用する部材や加工を最小限に抑えることも実現した。峯社長は「もっと改良を進める」と開発を継続する方針。

海外での販売も視野にある。その際は国連の持続可能な開発目標(SDGs)の「つくる責任 つかう責任」などを打ち出し、国産ヒノキを使った物語性を訴えていく考えだ。(西部・関広樹)

日刊工業新聞2020年5月5日

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