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終末期のがん治療は変わるか!?京大が生存率を80―90%の精度で予測する手法開発

最適な治療を提供。客観的な判断基準としての活用目指す
 京都大学大学院医学研究科の奥野恭史特定教授らの研究グループは、がん患者の病気の進行具合や生存率を80―90%の精度で予測できる手法を開発した。患者の血液から得られる3種類の検査値を組み合わせて算出し、98年から京大病院が記録している5000人以上のがん患者の検査値で予測モデルを構築した。終末期の患者に最適な治療を提供する客観的な判断基準として活用が期待される。

 生存期間1カ月を90%以上、同3カ月を80%以上の精度で予測できるという。データとして電子カルテに入力すればより客観的な判断ができるようになる。従来の予測モデルでは2カ月以上先の生存予測は難しく、精度は最高でも70%にも満たなかった。担当の医師の主観的な判断に左右されるなどの課題が指摘されていた。

 終末期の患者には、病気の進行具合や治療の効果、生存できる確率などの医学的な見通しである「予後」の通知が必要となる。最適なタイミングでの緩和医療への移行や、医薬の治験を実施する際のリスク回避に、今回の予測モデルを役立てられるという。また、不適切な治療の継続で生じる医療費の無駄を削減するための判断基準としての活用も見込める。

 京大病院の武藤学教授は「医師の先入観を排除し、普遍的な判断ができるようになる」と話す。今後は他の医療機関の患者から得た検査値を当てはめ、予測精度の安定性と有効性を実証する必要があるとしている。
日刊工業新聞2015年10月01日 科学技術・大学
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
10%超改善されることで医療費は削減されるのかもしれないが、患者にとってどこまで具体的なことができるのかもっと知りたい。

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