世界初の「カーボンナノチューブ接着シート」の実力
富士通研究所(川崎市中原区、原裕貴社長、044・754・2613)は、最高で100W/mK(ワット毎メートル毎ケルビン)と極めて高い熱伝導性を持つカーボンナノチューブで構成した接着シート(写真)を世界で初めて開発した。課題だったカーボンナノチューブの裁断やハンドリングが容易になり、例えば電気自動車(EV)向け車載パワーモジュールへの実装などの放熱材料としての実用化を見込む。材料メーカーなどへのライセンス(使用許諾権)で実用化を目指す。
カーボンナノチューブは高い熱伝導性を持つため、半導体素子などの熱源から熱を逃がすための放熱材料として活用が期待される。ただ、形状が崩れやすく扱いが困難なため実用化には使いやすさの点で課題があった。
今回、垂直方向に並んだカーボンナノチューブを本来の特徴である高い熱伝導性と柔軟性を損なうことなく、配列を保持したままラミネート加工する技術と、十分な接着性を保持したまま接合する技術を開発した。
ラミネート層は保護シートと接着層の2層で構成され、カーボンナノチューブの上下をラミネート層が保護する積層構造を持つ。カーボンナノチューブの密度、樹脂の種類や厚み、接合条件といった三つ以上の相関パラメーターを最適化し、カーボンナノチューブの熱伝導性を損なうことなく、十分な接着性を保持したまま接合を行うことが可能となる。
カーボンナノチューブ接着シートは、既存の高熱伝導材料として知られるインジウムを原料とする放熱材料(インジウムシート)と界面抵抗も含めた実測値により比較した結果、最大で3倍の熱伝導率を確認した。
日刊工業新聞2020年4月20日