今年は「生物多様性のスーパーイヤー」目標は30年までに生態系の損失の実質ゼロ!

環境保全で新規制 企業活動、迫られる大変革

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ローマでの作業部会(国際自然保護連合日本委員会提供)

2020年は「生物多様性のスーパーイヤー」と言われている。国連の会議で生物を守る新しい世界目標が決まるからだ。1月に公表された草案によると、新
目標は生態系の損失の実質ゼロを目指し、経済構造の大変革を掲げる。直近の国際会議でも草案を支持する声が多く、企業活動も大胆な変革が迫られる。

【行動目標策定】

新しい目標は現在の「愛知目標」の後継となる。国連は生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)を中国・昆明市で10月に開いて新目標を採択する計画だったが、新型コロナウイルス感染の広がりで延期となった。各国交渉官が新目標を検討する作業部会も延期されており、COP15の開催時期は見通せてない。

それでも現在までの交渉で“ポスト愛知目標”の概要が判明している。1月に公表された草案は、長期と中期の2本立ての目標となっている。長期ビジョンに当たる「2030・2050ゴール」は、30年までに生態系の損失を実質ゼロにし、50年までに20%以上の向上を目標案として示した。

30年までの中期戦略「2030行動目標」には20の個別目標がある。目標14は経済活動による影響の半減、目標16はバイオテクノロジーによる生物多様性への潜在的な影響の防止など、企業活動に関連する表現が並んでいる。

新目標の根底には“transformative change(革命的な変化)”という方向性がある。大胆な変革がなければ生物の減少を食い止められないと科学者が訴えており、草案にも反映された。

力強いメッセージを

草案の公表後、初めての国際会議となった作業部会が2月末、イタリア・ローマで開かれた。参加した日本自然保護協会の道家哲平部長によると「欧州企業は力強いメッセージと明確な目標を求めていた」という。例えば汚染削減を目指す「行動目標4」に対し、化学肥料や農薬など汚染源を具体的にするように求めていた。また、汚染の排出を止めるだけでなく、すでに自然界に流出した汚染物質も回収すべきだと主張していた。

道家部長は「意見が新目標に盛り込まれなくても、国際社会が何に注目しているか分かる」と語り、社会の関心事が次の規制対象として議論の俎上(そじょう)に載る可能性を指摘する。

【新たな潮流】

「革命的な変革」にも否定的な声は上がらなかった。一方、実現のために大規模な資金援助を求める途上国もあった。急先鋒(せんぽう)となったブラジルは、支援額の明確化を要求した。気候変動をめぐる国際交渉と同様、途上国が先進国に援助を求める構図が浮き彫りになった。

気候変動交渉では15年の「パリ協定」採択後、温室効果ガス排出ゼロの“脱炭素”への流れが生まれ、再生可能エネルギー100%での事業運営が環境先進企業の証となった。生物多様性も“損失ゼロ”が潮流となるのか。道家部長は「森林破壊ゼロなど、達成手段がある特定分野で認証制度ができる可能性がある」と話す。日本企業もこれまでとは次元の異なる生物多様性保全が求められそうだ。

日刊工業新聞2020年4月10日

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