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アジアで育成、日本で採用ーエンジニア確保の新しいかたち

テクノスマイルのアジア人エンジニア育成が順調に
アジアで育成、日本で採用ーエンジニア確保の新しいかたち

ミニカー組み付けの練習

 製造業向け総合人材サービスのテクノスマイル(福岡県宮若市)が進めるアジア人エンジニア育成事業が軌道に乗り始めた。中国・天津大学などで採用した天津8期生19人がこのほど来日、入社前研修を終え10月1日から国内自動車部品メーカーに配属される。今後はタイやミャンマーでの採用も始める。理工系技術者の不足に苦しむ国内メーカーに、優秀な海外人材を売り込む。

 テクノスマイルの現地法人・天津育豊人材培訓中心は天津大学、天津科技大学などと提携し、日本企業の説明会を年間5回程度行っている。同説明会には500人程度が参加し、このうち100人程度が日本行きを希望登録する。この100人を30―40人に絞り込み、1年間無料の日本語習得クラスを開講する。

 受講を通じて本人の意欲や適性を見極め、最終的に日本での就労を希望する20人程度をテクノスマイルが正社員として採用し、日本企業に派遣する。国内の人材不足に対応できるほか、中国や東南アジア諸国連合(ASEAN)に進出する際に必要となる基幹人材の育成が主な目的だ。

 9月中旬に来日した8期生19人は、福岡県築上町にある同社北九州研修所で団体訓練やビジネスマナーのほか、日本での生活に不可欠なゴミの分別方法や買い物の仕方などの生活習慣を学んだ。入社式を経て、10月から契約企業に配属される。配属後も定期的に面談を続け、雇用を継続するか、配属企業へ転籍するか、中国へUターンするかなどを3―5年かけて調査する。

 19人はほぼ全員が大学で機械設計や情報処理などを学び、複数の資格も習得している。多くは日本語能力試験「N2」も取得済みだ。全員が自国技術の遅れを指摘する一方で「中国はまだ発展途上だが、やがては世界の工場からメーカーへ育つ」(孫逸微さん)、「50年後、100年後には日本や米国に負けない、世界で勝てる国になると信じている」(胡修華さん)などと、熱く夢を語った。

 受け入れ側も期待している。中部地区の大手自動車部品メーカーは「日本では理工系技術者の確保が非常に難しくなっている。仕事を覚え、将来は中国をはじめ海外の管理・監督者として期待している」と話した。テクノスマイルは今後もアジア人学生の教育と雇用を続け、国内製造業各社にグローバル人材として送り込む。

 これからも少子高齢化、製造業離れなど、日本企業を取り巻く環境は厳しい。海外の優秀な人材確保は、中堅・中小企業でも進みそうだ。
(文=大神浩二)
日刊工業新聞2015年09月29日 モノづくり基盤・成長企業面
三苫能徳
三苫能徳 Mitoma Takanori 西部支社 記者
研修生は現地トップクラスの学校で教育を受け、そこからさらに厳選されます。彼ら彼女らにとって“あこがれの日本”で働けるということがモチベーションの大きな部分になっているようです。 その意味で言えば、これからも日本は目標とされるような技術力の差を持ち続けていかなければいけないということですね。 ただ、その技術力を高める源泉の一つである人材確保が困難になっているという逆説的な状況。外国人採用だけでなく、大学や高専の教育を見直すなど、就職までを含めた日本人の人材育成の枠組みが求められます。

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