空き時間にチャットで問診!女性の悩みに応えるオンライン診察アプリの中身
特有の悩み問診、ピル郵送
ネクストイノベーション(大阪市北区、石井健一社長、06・6147・9556)は、女性向けオンライン診察サービス「スマルナ」を手がける。避妊など女性特有の悩みに対し、チャットでの問診を通じてピルを郵送する。ターゲットは、近くに婦人科がなかったり、婦人科での診察に抵抗があったりする10―20代の若い女性。2月現在、8万人がユーザー登録しており、月約3000件の相談が寄せられている。
【医療の質充足】
同社は16年6月設立のベンチャー。医療機関へのアクセスに課題を抱える人に対し、オンラインでのコミュニケーションを通じて医療の質を充足させる。17年4月、髪が薄くなる「男性型脱毛症」の診断を受けられるサービスなど男性の体の悩みに対応する“コンプレックス市場”に参入。オンライン診察サービス「スマ診」を展開し、患者がネット上で受診・決済し、薬を郵送で受け取る仕組みを構築した。
次のステージとして狙いを定めたのが、女性向け診察サービス。石井社長は「ピルを容易に入手できる欧州などと異なり、日本では若い女性が医療機関に行くハードルが高い」との課題意識があった。これまでのシステムの運用ノウハウを蓄積し、資金調達を通じてサービスを拡充、女性社員も増やして体制を整えた。
18年6月にはスマルナをスタートさせた。子育て中の女性薬剤師が中心となり、薬効や副作用など薬の相談に細かく応じている。パートナーシップや避妊の悩みには助産師も対応にあたる。ユーザーはアプリケーション(応用ソフト)上で手軽に空き時間を活用しながら悩みを相談し、問診を受けられる。
【SNSで認知度】
認知度向上に火を付けたのが会員制交流サイト(SNS)だ。多くのユーザーがスマルナについてコメントを投稿するなど反響を呼んだ。石井社長は「これまで医療サービス名がSNS上に投稿されることはほとんどなかった」と手応えを感じる。インフルエンサー(世間に影響を与える人物)が発信すれば効果はより大きくなる。
潜在ニーズのさらなる掘り起こしを目指し「オフラインでの接点も持ちたい」と石井社長。3月8日、国連が定める「国際女性デー」に合わせ、大阪市北区の百貨店で、薬剤師や助産師によるトークイベントを開いた。来場者が体の状態に向き合い、働き方や家族・パートナーとの接し方などを考えるきっかけづくりの場とした。
【対面診察も】
4月には医療法人と連携し、大阪市福島区に若年層向けのレディースクリニックをオープンした。対面での診察ニーズも取り込み、女性の悩みに対して多角的に応える。診察室やカフェ風の受け付けに加え、プライバシーを確保した相談ブースを設ける。薬剤師と助産師が常駐し、個別相談に応じる。商業施設の1階に入居するため「母親やパートナーと買い物のついでに立ち寄ってほしい」(石井社長)と期待を寄せる。今後、クリニックは全国主要都市への拡大を目指す。(大阪・中野恵美子)