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クリーンディーゼル技術を支える“三種の神器”

日本企業のシェア高くVWショックどこまで?
クリーンディーゼル技術を支える“三種の神器”

燃料規制の強化などを背景にターボチャージャーの搭載率は高まっている(IHIの国内工場)

フォルクスワーゲン(VW)の排ガス不正問題が世界に波及し、ディーゼル車需要に影を落とす。クリーンディーゼルエンジンには“三種の神器”と言える技術がある。

 代表格がコモンレールシステム。高圧にした燃料をレール(蓄圧室)内に蓄え、電子制御ユニット(ECU)でタイミング良くインジェクターから各気筒に適切に噴射する。高圧化するほど燃料が微粒になり、燃え残りが減り、粒子状物質(PM)の発生を抑える。ディーゼルエンジンを劇的に進化させた技術で、デンソーが世界で初めて実用化した。
 
 二つ目がターボチャージャー(過給器)や排気ガス再循環装置(EGR)などの吸排気系システム。EGRは東京ラヂエーター製造やティラドが手がけ、ターボチャージャーはIHI三菱重工業などが世界4強に入る。IHIはVW向けが最も多いとされる。

 三つ目が粒子状物質除去装置(DPF)や尿素SCR(選択還元触媒)など排出ガス後処理システムユニット。DPFでは日本ガイシ、イビデンが高シェアを握る。“三種の神器”に共通するのは日系サプライヤーが大きく貢献し、参入障壁が高い難易度の高い技術というところだ。

 自動車メーカーの腕の見せ所は、これらのハードウエアを最適にコントロールする電子制御技術、エンジン単体で排出ガスの発生を極限まで抑える燃焼技術にある。VWや仏ルノーなど欧州メーカーは研究を重ね、高いシステムインテグレーション力で芸術品とも言われるクリーンディーゼルエンジンを世に送り出すことを矜持としてきた。

 今回の不正問題でディーゼル車の先進国での需要見通しは不透明になったが、短期的には踊り場を迎えそうだ。日系サプライヤーの生産計画にも影響を及ぼすだろう。当面は「情報収集を続けるしかない」(日本ガイシ)のが実態だが、VWの不正問題を機に、自動車メーカーが一段とサプライヤーとの接点を深める動きになれば、商機は広がるかもしれない。

 世界販売約9000万台弱のうちディーゼル車のシェアは1―2割とされる。欧州市場では半分を占め、高成長が見込まれるインド市場でも普及しつつある。ディーゼル車は世界で一定の市場を形成し続けるだろう。
日刊工業新聞2015年09月28日 付「深層断面」の記事から一部抜粋
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
記事にもあるように短期的な調整はあるかもしれないが、中長期でディーゼル車は一定の成長が見込める。またディーゼル以外での伸びも期待できる。例えば自動車用ターボチャージャーの世界需要は過去10年間で倍増、足元では年間3000万台、7000億円の市場規模とみられる。もともと欧州のディーゼル車向けがけん引していたが、最近はダウンサイジングがトレンドのガソリン車も伸び始めている。

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