JR東海初のハイブリッド車両、試験運転始まった「新型特急」がスゴい

  • 1
  • 0
蓄電池は旅客車用HSで国内最大容量の「HC85系」

JR東海は新型特急車両「HC85系」を試験運転中だ。ディーゼルエンジンで発電し蓄電池を併用して走行する同社初のハイブリッドシステム(HS)をメーカーと共同開発。安全性・安定性や快適性・利便性のため新型台車などの最新技術も盛り込んだ。1989年に登場した現在の高山本線「ひだ」と紀勢本線「南紀」の次期車両として2022年度の営業運転を目指す。(取材=名古屋編集委員・村国哲也)

【最高時速120キロメートル】

新車両の検討は14年に始めた。環境性能や低燃費、低騒音を考慮しハイブリッド方式を候補とした。ただし通勤車両が行き交う路線も走行するため、HSでは国内で前例がない最高時速120キロメートルが条件だ。実証を含め同方式の採用決定に3年をかけた。

HSの開発パートナーに東芝インフラシステムズ(川崎市幸区)を選んだ理由を平野正敏車両部長は「グループ会社での電池製造の実績が豊富で車両のことも熟知している」と説明する。主発電機・主電動機のエネルギー効率は97%と限界値に近い。蓄電池は旅客車用HSで国内最大の容量を誇る。

【HS小型化】

HSはモーターのみで走行するシリーズ式を選択した。エンジンで走行する車両に不可欠な変速機や露出部品をなくし、耐久性、メンテナンス性も高めた。HS全体を小型化して車両の床下に納め、重心を低くして乗り心地や安定性も高めた。

将来を見越し09年から開発を始めた新型台車もHC85系で初めて搭載した。くしくも平野部長がかつて設計のリーダーを務めた台車だ。溶接を極力減らし軽量化と高強度を両立するため、厚さ9ミリ―12ミリメートル×長さ3000ミリメートルの鋼板を熱間プレスで深絞りする特殊製法を採用している。

台車の開発も30年に一度の大プロジェクトだ。今後開発する通勤車両には同じ台車を使う。「一度完成してしまえばなかなか直せない。開発者としてのプレッシャーは大きかった」と平野部長は苦笑する。

他の最新技術も盛り込んだ。エンジンを車体に取り付ける防振ゴムを2重にし客室への振動伝達を抑える技術、独自の自動列車停止装置「ATS―PT」の2重化もHC85系で初めて採用した。

新幹線には採用していたリアルタイムに近い車両・地上間のデータ通信も在来線では初めて採用している。走行時の異常を早めに察知し運行判断を支援する。データは車両の予知保全にも活用し、「事故発生を極力減らしていく」(平野部長)考えだ。

【燃費15%向上】

試験運転では目標とした燃費の15%向上を確認する。「営業運転までに客席をさらに快適な空間にしたい。期待してほしい」と平野部長は意気込む。20年中の実証後、設計の修正で快適性や安定性もさらに高めていく。

日刊工業新聞2020年3月30日

キーワード
JR東海 特急 新幹線

関連する記事はこちら

特集