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1位IBM、2位インテル、3位ソニーという順位の出願特許は?

人工知能で米国が突出、ビッグデータ関連では日本勢が善戦
 近年注目を集める人工知能(AI)。特許庁によるとAI関連の特許出願件数で米国勢が抜きんでている。AIは自動運転車やサービスロボットなどに不可欠な技術で、「将来自動車産業などで日本の競争優位が覆される懸念」(2015年版ものづくり白書)も出始めた。他方、AIの性能を支えるビッグデータ(大量データ)関連の特許では日本勢が善戦。AI分野で巻き返すうえでカギを握りそうだ。

 AIは00年代になって急速に性能を高めている。デジタル情報量の増加を生かして統計や確率の考え方を取り入れたことで、言語理解や翻訳、画像認識などの精度が飛躍的に向上した。

 例えば米IBMの質問応答システム「ワトソン」が米国の人気クイズ番組でクイズ王に勝利するまでになった。今やワトソンは金融機関で情報分析や接客対応に、医療機関で診断支援などさまざまな分野で利用されつつある。

 また自動運転車や飲食店で働くサービスロボットといった先端分野では、AIは本体の自律的な制御だけでなく、周辺画像の認識などにも使われている。このようにあらゆる経済活動、社会活動でAIが中核技術になると予想されている。

 特許庁が08―12年を対象としたAI関連特許の調査では、米国籍による出願件数が3476件と全体の5割近くを占めた。これに対して日本国籍は約15%の1109件だ。欧州国籍は約10%の759件。また中国籍は20%弱の1410件だった。

 AI技術の出願件数ランキングでは米IBMが首位、2位が同インテル。3位のソニー、4位のNEC、5位のNTTなど日本企業も名を連ねるが、裾野の広さで米国に分があるようだ。

 特許出願件数自体がその産業の競争力の高さを示すとは限らないが、実際に自動車やロボット関連では日本国籍の特許出願件数が他地域よりも多いなど、相関性が認められる。

 AIにいかに良質で多くのデータを“食べさせるか”が性能のカギを握る。この点からビッグデータにも注目が集まる。00―11年を対象とした調査では、ビッグデータ関連の特許出願件数は米国籍が48・8%の9496件と首位に立つ。

 ただ、日本国籍も31・5%の6134件と健闘。実際、出願人別ランキングで2位の日立製作所がビッグデータを解析して小売りや流通の現場改善を支援するAIを相次いで発表するなど、日本勢のAI開発も盛んになっている。

 日本がビッグデータの特許に強い背景ははっきりしないが、「国内でデータ流通量が増えてきた」(特許庁)ことがその土台となった可能性がある。また「情報大航海プロジェクト」をはじめ一連のIT関連の国家プロジェクトも評価は芳しくないが、ビッグデータの技術を底上げしたのかもしれない。
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
出願数の数字がやや古いものなので直近はどのように変化しているかだが、あまり変わりはないだろう。出願数が必ずしも国や企業の競争力と直結するわけではない。グーグルように場合によってはあえて特許化しない戦略もある。自社で貯めたビッグデータをどのようにAIで生かすか。個人情報の取り扱いなどセンシティブな問題もある。現状、外部に比較的オープンなグーグル、クローズドなアップル。この2社のスタンスの違いがとても興味深い。

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