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首都圏・中部から受注を取り込め!越境連携する地方の自動車部品サプライヤー

九州3地域、共同受注や技術補完で域外・海外に対抗
首都圏・中部から受注を取り込め!越境連携する地方の自動車部品サプライヤー

3県の自動車関連組織が松本工業豊前工場を視察

 福岡、大分、宮崎3県の自動車関連団体が、県境を越えて連携する取り組みが始まった。これまで各県が独自に行ってきた受注活動を見直して、オール九州として広域に受注や企業誘致に取り組む。足りない面を補完し合うことで技術不足を補い、首都圏や中部地域からの受注を取り込む。韓国など海外部品メーカーに対抗する狙いもある。

 連携したのは北九州地域自動車部品ネットワーク(パーツネット北九州)、大分県自動車関連企業会、宮崎県自動車産業振興会。それぞれが実施するセミナーへの参加や、サプライヤー視察を合同で行うほか、共同受注まで視野に入れている。

 9月上旬に日産車体九州(福岡県苅田町)などを視察する第一回の交流ツアーを行った。視察先の1社、松本工業豊前工場(福岡県豊前市)では「内製化率はどれくらいか」「多能工づくりのやり方は」など質問が相次いだ。同社の松本茂樹社長は「競争することもあるだろうが、助け合うことで九州の自動車産業を盛り上げよう」とエールを送った。

 九州新幹線が縦貫する福岡、熊本、鹿児島3県と比べ、北九州、大分、宮崎3地域はこれまで鉄道も道路インフラも脆弱(ぜいじゃく)だった。トヨタ自動車九州(同宮若市)など完成車メーカー4社が立地し、2014年度130万台の車両を生産したが、インフラ整備の遅れが誘致や交流の足かせだった。だが16年春に北九州市から宮崎市を結ぶ東九州自動車道が全面開通することにより機運が醸成された。

 大分県は連携の目的を「受注獲得の機会創出」(商工労働部)とトヨタ、日産両グループが操業する福岡での取引拡大に期待する。宮崎県は新規参入を熱望する。福岡、大分両県とは距離があり、東九州道の整備前は物流が参入障壁となっていた。「宮崎にも機械や金属など高い技術を持つ地場企業は多い。補完関係を築きたい」(野間純利商工観光労働部産業振興課長)と意欲をみせる。

 一方、11月に設立10周年を迎えるパーツネット北九州は14年7月に東北に交流団を派遣するなど、技術力向上に向けた取り組みを積極的に進めている。柳下制也会長(デンソー九州社長)は、「九州の自動車産業は参入から質の向上へと目的が変化している」と、会員各社にさらなるレベルアップを求めている。北九州市産業経済局の大川博己理事も「東九州道開通で自動車部品流通が活性化する好機」と連携を歓迎する。

 一大自動車生産地に育った九州だが、主要部品は依然として関東や中部で生産されている。また海外から安価な部品や金型の流入も止まらない。打開には迅速・安価・高付加価値の部品生産が避けられない。3県は協力して課題克服に挑む。
(文=北九州支局長・大神浩二)
日刊工業新聞2015年09月25日 中小企業・地域経済面
三苫能徳
三苫能徳 Mitoma Takanori 西部支社 記者
記事中にもあるように、この動きの背景には北九州市と宮崎市が東九州自動車道で“直結”することの影響が大きいです。一方でこれからは、宮崎から北九州へ、という一方通行によるモノの流れだけでなく、大分を含めたトライアングルの相互通行の流れ、またそこから波及した九州南部の活性化につながってほしいです。

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