中国台頭で国内再編急ピッチ―総合化学メーカーの創業地は今

三菱化学、旭化成、三井化学、住友化学。四社の取組みに見る

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工業用地186万平方メートルを誇る三菱化学黒崎事業所(中央)「デュラビオ」の生産設備が12年に稼働した
 中国メーカーの台頭を背景に、国内化学業界が汎用品から高機能品へ経営資源を移す動きが加速している。国内化学大手の創業地も例外ではなく、高機能化学品への生産再編が鮮明となっている。80年超の歴史で培われた技術を生かして機能化学品の生産増強を進める総合化学大手各社の創業地の動きを追った。
 

三菱化学/北九州市−植物由来樹脂を拡販、市と組み余剰地に企業誘致


 「80年の誇りを持って、高機能商品事業を拡大させていく」。染料工場として稼働してから80年という節目の年を迎えた三菱化学黒崎事業所(北九州市八幡西区)所長の小林英信執行役員は抱負をこう語る。黒崎事業所は1960年代、高度成長の波に乗り生産を始めたポリエステル繊維原料の高純度テレフタル酸(PTA)、ナイロン原料のカプロラクタム(CPL)など化学品生産設備を99年以降、相次ぎ停止した。

 一方で、40年の生産実績を持つポリカーボネート(PC)樹脂の技術を生かした植物由来のPC樹脂「デュラビオ」の生産設備(年産能力5000トン)が12年に稼働した。デュラビオは発色性が良くて透明度が非常に高く、擦り傷や切り傷が付きにくい。スズキの軽乗用車「ハスラー」や「アルト ラパン」の内装部品、シャープ製スマートフォン「アクオスクリスタル2」の前面パネルなどに採用された。

 このほか、無機材料の技術を生かし、半導体工場向け超純水の製造に欠かせないイオン交換樹脂などの新製品開発も進んでいる。

 ただ、機能化学品は大量生産する汎用品に比べて生産量が少ない。186万平方メートルもの広大な土地を高機能品の生産設備で埋めることは難しく、空き地など余剰資産が増えている。

 このため、北九州市と組んで余剰地に他社を誘致する事業を始めた。火力発電による自家発電など黒崎事業所のインフラを活用できる利点を生かしステラケミファ、太陽インキ製造(埼玉県嵐山町)など3社の誘致に成功した。広大な敷地を持つ化学各社の国内拠点は今後も生産再編が続く。汎用品から高機能品への移行で空いた余剰地の有効利用に向けたヒントになる。
 

旭化成/宮崎・延岡市−再生セルロース繊維好調、40年ぶり設備増強


 旭化成発祥の地で創業92年の延岡支社(宮崎県延岡市)。84年の歴史を持つ再生セルロース繊維「ベンベルグ」で約40年ぶりに増産投資が行われた。約30億円を投じた増産設備が14年6月に稼働。年産能力1万6500トンと従来比1割増えた。延岡支社も他社の創業地と同様、国内製造業の海外移転で工場の閉鎖が続き、社員数は約6000人弱と10年前の半分近くに減った。

 そんな中、ベンベルグを増産投資できたのは世界で旭化成しか生産していない製品だったからだ。綿花の種の周りのうぶ毛(コットンリンター)という使い道がなかったものを、絹に似た手触りを持つ資源に変えた特性を生かしてインドやパキスタンの民族衣装「サリー」向けという海外市場開拓に成功。夏涼しく冬暖かい基本機能を生かし、機能性インナーにも採用された。

 ベンベルグから作る不織布「ベンリーゼ」もシートマスク向けが好調で17年3月に生産能力を3割増やす。長年の歴史を持つ独自製品の差別化に成功した事例と言える。

日刊工業新聞2015年09月24日 素材・ヘルスケア・環境面

COMMENT

三苫能徳
西部支社
記者

これら大企業の撤退や規模縮小による地域への影響は小さくありません。例えば跡地を商業地・宅地にしようとしても、土壌汚染などの問題もあり再利用のハードルは高いでしょう。三菱化学による企業誘致の試みは、地域の活力とモノづくりを維持するおもしろい取り組みです。文中にもありますが、地方の活性化とからめた今後のヒントになると思います。

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