ジャパンディスプレイ、脱・液晶パネル依存の術は“仮想訓練場”
ジャパンディスプレイ(JDI)は、仮想現実(VR)ソリューション市場へ参入する。消防やテロ対策、災害対応などの多人数訓練向けの提供を26日に始める。自社製のVRヘッド・マウント・ディスプレー(HMD)や映像技術を生かし、液晶パネル依存からの脱却を目指すモノからコトへの事業構造転換の第1弾と位置付ける。
JDIは官公庁や企業向けのVR訓練ソリューション事業に乗り出す。HMDだけでなく、複数台のカメラとパソコンを設置して利用者の動きをVR空間内に再現するトラッキングシステム構築や、映像コンテンツ制作まで一括で請け負う。
顧客の訓練要望に応じたコンテンツ制作では、パートナー企業との提携も検討する。まずは国内で事業を展開する。提供するソリューションの価格は数百万円から。
複数の利用者は体の細かな動きを検知するマーカーを装着してトラッキングシステムのある空間内に入れば、“仮想訓練場”で多人数同時参加の訓練を行える。現実世界で再現しにくいテロや大規模災害発生をVR技術で再現し、より質の高い訓練を実施できる。
JDIの強みは自社製のHMD。顧客のニーズに合わせて柔軟に仕様変更でき、VRコンテンツとの相性を考慮しながら最適な組み合わせでソリューションを提供する。訓練用途以外に、製造業では例えば、自動車など大型製品の設計検証に活用できる。
JDIは2018年にVR用HMDを発売した。ただ、その後に機器の単品売りだけでは、黎明(れいめい)期のVR市場の裾野を広げられないと判断せざるを得なかった。
顧客の要望聞き取りからシステム構築、コンテンツ制作まで一括で請け負うことで、市場の本格的な立ち上がりに貢献したい考えだ。
日刊工業新聞2020年2月26日