“スシパーティー”に欠かせない月桂冠のカリフォルニア産「日本酒」
酒造りの肝となる水とコメは現地調達。原料には「カルローズ」を使う地酒
海外で日本食の人気が高まるにつれ、清酒のグローバル化も進展している。国内での需要が縮小傾向にあるだけに、清酒メーカーにとって海外進出は大きな課題。月桂冠(京都市伏見区、)が1989年に米国月桂冠(カリフォルニア州)を設立し、現地生産に乗り出したのもそのためだ。同社の米国生産は拡大を続けており、米国生まれの「日本酒」が現地に根ざしつつある。
「半分以上はナショナルチェーンのスーパーやレストランに販売している」と野田幸雅貿易部長兼貿易課長は話す。月桂冠の米国での清酒シェアは3割近くでトップを争う。競合メーカーは販路が日本食レストランなどに限られる中で、月桂冠ブランドの清酒は米国の一般的な量販店やレストランでも浸透している。「すでに”カリフォルニアロール“は現地に根付いた料理。ホームパーティーで振る舞うことも多く、日本酒も一緒に広まっている」と言うように、”スシパーティー“に欠かせないアルコール飲料としても人気だという。
同社はカリフォルニア州フォルサム市に米国月桂冠を89年設立し、90年10月から酒造りを開始した。「工場選定には、何よりも良い水がとれるところを第一に考えた」(野田部長)この場所は、カリフォルニア州という大消費地に位置するのも強みだ。
同工場には同社が国内で確立してきた四季醸造の技術を導入。当初は年間900キロリットルの生産でスタートしたが、99年に1800キロリットル、03年に2500キロリットル、09年には4200キロリットルまで拡大した。15年は約6000キロリットルの生産を計画している。
製造部のバイスプレジデントは米国人
右肩上がりの生産量に対応し、製造設備も順次拡充。06年に発酵タンクや貯酒タンクを追加して同5000キロリットルまで生産できる体制とし、さらにタンク拡張やタンク追加で現在の生産能力は同7500キロリットル。「今後10年以内に1万キロリットルまで引き上げたい」と野田部長は説明する。
原料には「カルローズ」というカリフォルニア米を使用。酒造りの肝となる水とコメは現地調達するが、蒸米から麹(こうじ)を作るための麹菌だけは定期的に日本から輸入しなければならないという。また人材面では日本人技術者を送り込み、酒造りを指揮しているが、すでに製造部のバイスプレジデントは米国人。米国“地酒”が日本でも人気を集める日がいつか来るかもしれない。
現地生産で主力商品となるのは精米歩合70%の純米酒「トラディショナル」で、スッキリした淡麗タイプ。同60%の「ブラック&ゴールド」も人気だ。一方、主力商品の一つであるスパークリング清酒「ジパング」は日本からの輸入に頼る。ジパングは日本では販売せず全量を米国に輸出しているだけに、今後は現地生産が課題となる。「現時点ではかなりの稼働率で余裕がない。何も決まっていないが、将来の増設のタイミングで考えていかないといけない」と野田部長は話す。
(文=京都・尾本憲由)
「半分以上はナショナルチェーンのスーパーやレストランに販売している」と野田幸雅貿易部長兼貿易課長は話す。月桂冠の米国での清酒シェアは3割近くでトップを争う。競合メーカーは販路が日本食レストランなどに限られる中で、月桂冠ブランドの清酒は米国の一般的な量販店やレストランでも浸透している。「すでに”カリフォルニアロール“は現地に根付いた料理。ホームパーティーで振る舞うことも多く、日本酒も一緒に広まっている」と言うように、”スシパーティー“に欠かせないアルコール飲料としても人気だという。
同社はカリフォルニア州フォルサム市に米国月桂冠を89年設立し、90年10月から酒造りを開始した。「工場選定には、何よりも良い水がとれるところを第一に考えた」(野田部長)この場所は、カリフォルニア州という大消費地に位置するのも強みだ。
同工場には同社が国内で確立してきた四季醸造の技術を導入。当初は年間900キロリットルの生産でスタートしたが、99年に1800キロリットル、03年に2500キロリットル、09年には4200キロリットルまで拡大した。15年は約6000キロリットルの生産を計画している。
製造部のバイスプレジデントは米国人
右肩上がりの生産量に対応し、製造設備も順次拡充。06年に発酵タンクや貯酒タンクを追加して同5000キロリットルまで生産できる体制とし、さらにタンク拡張やタンク追加で現在の生産能力は同7500キロリットル。「今後10年以内に1万キロリットルまで引き上げたい」と野田部長は説明する。
原料には「カルローズ」というカリフォルニア米を使用。酒造りの肝となる水とコメは現地調達するが、蒸米から麹(こうじ)を作るための麹菌だけは定期的に日本から輸入しなければならないという。また人材面では日本人技術者を送り込み、酒造りを指揮しているが、すでに製造部のバイスプレジデントは米国人。米国“地酒”が日本でも人気を集める日がいつか来るかもしれない。
現地生産で主力商品となるのは精米歩合70%の純米酒「トラディショナル」で、スッキリした淡麗タイプ。同60%の「ブラック&ゴールド」も人気だ。一方、主力商品の一つであるスパークリング清酒「ジパング」は日本からの輸入に頼る。ジパングは日本では販売せず全量を米国に輸出しているだけに、今後は現地生産が課題となる。「現時点ではかなりの稼働率で余裕がない。何も決まっていないが、将来の増設のタイミングで考えていかないといけない」と野田部長は話す。
(文=京都・尾本憲由)
日刊工業新聞2015年09月23日 モノづくり面