自動車の軽量化を考える(9)車台を変える

軽量化と性能。総合的なバランスをどうとるかは自動車メーカーの腕の見せどころだ

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スズキは骨格部を連続化し少ない部材でボディー剛性を確保
 自動車の軽量化を巡っては、プラットフォーム(車台)やボディーの構造という観点からも自動車メーカー各社が知恵を絞っている。スズキは次世代プラットフォームで骨格の形状を変えることで大幅な軽量化を図っている。ダイハツ工業は室内空間の拡大と走行安定性の維持というトレードオフの関係を、軽量素材やトランクなどの最適配置によって解決しようとしている。
 
【滑らかな骨格】
 スズキは次世代プラットフォームの開発を進めており、現行4種から3種に絞ってプラットフォームを統合化する計画だ。「統合は何世代もやってきて海外展開にも貢献している。開発の効率化や規模の経済をさらに高める」(本田治副社長)。

 この統合に伴うプラットフォームの開発で重視しているのが軽量化だ。「技術者がもう一段の軽量化を体系的に行っている」(同)という。

 具体的には骨格構造の形状変更。現行のプラットフォームの骨格は形状が急激に変化しているため、外部からの力に対して曲がりやすい。このため補強材が必要となる。次世代プラットフォームでは、骨格を滑らかな形状にすることで補強を廃止し軽量化につなげる。

 骨格を連続形成する設計も取り入れた。現行プラットフォームは骨格部が分断していたが、次世代では連続してつなぐことで、分断の周辺部位の板厚を薄くできる。少ない部材でボディー剛性を確保するとともに軽量化も実現する。

【1リットル40km実現へ】
 「主要構造や部品の配置を全面刷新して求められる衝突性能や剛性、強度を向上しつつ、車両全体で最大15%軽量化する」(大西伊知郎四輪技術本部副本部長)計画。次世代プラットフォームは今後展開する新型車に採用する方針で、エンジンの熱効率の向上などと合わせて、軽自動車でガソリン1リットル当たり40キロメートルの燃費を早期に実現したい考えだ。

 ダイハツ工業は軽自動車で最大の室内空間を実現した新型車を開発、11月に発表する。登録車から軽自動車へのダウンサイズが進む中、「ダウンサイズするお客さまは軽に対しても荷室の広さや見晴らしの良さを求めている」(上田亨執行役員技術本部副本部長)という。そういったニーズを満たすために開発した新型車は、日常だけでなくレジャーでも使える軽自動車の新ジャンルと位置づけている。

【こだわりの空間】
 新型車の全高は1835ミリメートル。ゴルフバッグを縦にして詰めるほど室内空間にこだわった。その分課題も発生する。上田氏は「軽自動車の全幅やFF(前輪駆動)レイアウトを維持しながら全高を上げるには、重心高の抑制と操縦安定性の向上が必要だった」と話す。一般に車体の重心が低い方が安定した走行につながりやすい。

 新型車の全高はヒット車種の背高ワゴン「タント」と比べ85ミリメートル高いが、重心高のアップは10ミリメートルにとどめた。この重心高の抑制に軽量技術が効果を発揮している。ルーフパネルなどの板厚を薄くしたり、外板に樹脂を採用したりした。パンク修理キットを床下に配置したり、トランクを床下下部まで深さを持たせた。車体上部が軽くなるボディー設計で重心が高まるのを抑えた。

 さらにフロントアブソーバーなどの足回り部品のサイズアップなどで操縦安定性を確保。「全高の高さを感じさせない走行性能を目指した」(中島雅之チーフエンジニア)という。個々の素材や部品だけでなく、軽量化と性能を両立するための車1台の総合的なバランスをとることが自動車メーカーの腕の見せどころだ。

日刊工業新聞2014年10月27日 モノづくり面

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村上毅
編集局ニュースセンター
デスク

自動車に求められる一番の要素は衝突時の安全性だ。乗る人をを守る剛性と軽量化は本来はトレードオフの関係にある。二兎を追うためには、その部位を変えるのではなく、周辺部位も含めた検討が不可欠。まさに全体の設計力やシミュレーション技術などが求められている。

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