手術不要な「耳」や「目」の知覚デバイス。承認で米国が先行、日本は?

電気で見聞き、舌で見る。「人工網膜」などで新しい技術続々と

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外観は補聴器のように見える人工内耳Nucleusシステム(日本コクレア提供)
 音は空気中を伝わり鼓膜を振動させる。振動は内耳のうずまき状の蝸牛管(かぎゅうかん)に伝わり、そこの神経細胞を刺激し、脳の聴覚中枢に情報が伝えられる。脳は、この情報を処理し、「聴く」という知覚を認識し、言葉に翻訳する。従って成長過程において、耳の仕組みの異常により、音を感じる能力に問題があると「聴く」能力や言語の発達が遅れることになる。

 人工内耳は、蝸牛管の神経細胞を刺激できないといった原因により、音をまったく感じることができない幼児に対して、使用が考慮される医療機器だ。マイクで拾った音を電気信号に換え、蝸牛管内部に差し込んだ電極を通して神経細胞を刺激し、音を脳へと伝える仕組みである。外観は補聴器のように見える「デバイス」が拾った音を電気信号に換え、後頭部に植え込まれた「レシーバー」が受け取るため、見た目には分からない。

 機器を動かすために必要な電力も、「レシーバー」を通して受け取る。幼児の脳は柔軟であるため、訓練すれば日常生活でほぼ不自由のないレベルの言葉を獲得することができる。この人工内耳は、日本で承認され、健康保険の対象にもなっている。
(写真=A+Bが体外デバイスのサウンドプロセッサーと送信コイル、Cは体内レシーバーと刺激電極、Dは携帯型リモコン)

米ウィキャブ社の人工網膜は舌に情報伝える


 これと似たような仕組みの医療機器が人工網膜である。サングラスに取り付けられたカメラから取り込んだ映像を電気信号に換え、目の網膜に植え込まれた電極を介して、網膜の神経細胞を刺激するというものだ。

 米国ではFDA(米国食品医薬品局)により承認され、既に実用化されている。現状では、使用者は白黒のドットが動くような感じでしか知覚できない。画像の解像度を改善するために、電極数をさらに増やすことが検討されている。

 この人工網膜には手術が必要であり、網膜の神経細胞が正常に機能していることが条件だが、米国ウィキャブ社の開発した「舌で見る」デバイスBrain Port V100(2015年米国FDA承認)は、失明の原因に関係なく、手術が不要な医療機器である。サングラスに搭載されたカメラの映像を電気信号に変換し、それを切手大の大きさのパッドに伝え、振動や電気刺激により舌に情報を伝えるという仕組みだ。

 20×20ドットほどの点字パターンが、舌の上で発泡水がはじけるような感じで生じる。使いこなせるようになるには訓練が必要だが、目の前の障害物の形や大きさ、自分との距離や動きといった情報を知覚できるようになる。日本でも早期に承認され、利用できるようになることを期待したい。
(文=旭リサーチセンター主幹研究員・毛利光伸)

※日刊工業新聞では「医療機器新事情」を毎週火曜日に連載中

日刊工業新聞2015年09月22日 ヘルスケア面

COMMENT

明豊
執行役員 DX担当
デジタルメディア局長

まさにウエアラブルの次の「インプランタブル」の世界への入り口。「グーグル耳」とか「グーグル目玉」のことを村上憲郎さんが話しているので、ぜひ参考に。 http://newswitch.jp/p/1130

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