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「ムヒ」でおなじみの池田模範堂が満を持して発売する新カテゴリー商品!

その名も「イビキスト」
 池田模範堂は不快な寝息の音を和らげる栄養機能食品「イビキスト」を発売した。1日当たり4―6回プッシュを目安に口の奥に向けスプレーする。3種類の天然オイルとビタミンEを配合し、口の中をコーティングすることで空気の流れをスムーズにする。スウェーデンの専門機関「スリープ ラボ」と共同開発した。1本25グラム入りで、消費税抜きの価格は1500円。全国のドラッグストアで販売する。

社内スローガンまで変えた「ヒビケア」


日刊工業新聞2012年1月6日付「ヒット商品の舞台裏」より


 虫さされ・かゆみ止めの薬「ムヒ」シリーズで知られる池田模範堂(富山県上市町)。かつて虫に刺される夏場での売上高が8割以上を占めていた。だが、2007年にひび・あかぎれ治療薬「ヒビケア」(第3類医薬品)を発売すると女性を中心に爆発的にヒット。その年の12月だけで約50万個を販売。年間100万個以上を売り上げる商品となった。冬場の売上高を全体の3割に増やした。社内の雰囲気を刷新し、スローガンを「かゆみを科学する」から「肌を治すチカラ」に変えるまでになった。

 ヒビケアシリーズの生みの親は、同社研究所OTC第1グループの扇原秀雄グループ長だ。中学から大学までハンドボール部に所属し、指先を酷使するためひび割れに悩み、「いつか何とかしたい」と思っていた。

 好機は、同社に中途入社して訪れた。水溶性ビタミンで皮膚細胞を活性化する成分のパンテノールを使った製品開発に携わり、03年ごろからひびを治す薬に照準を絞った。当時の研究所長は「ちゃんと効果がないと発売できない」という姿勢。幸か不幸かひび割れしやすかった扇原グループ長は、自分の指に試作品を塗って効果を検証。ひびに悩む女性社員も参加し、効能の高いものに仕上げた。

 製造上の難点は「グリセリンが全体の4割を占めるため、製品の安定性を保つことがかなり難しい」(扇原グループ長)ことだ。クリームはべたつきなどの使用感も良くなければならない。バランス良く要求を満たすため、界面活性剤の扱いが得意な化学メーカーに出向き、一日中クリームを混ぜる作業を3週間繰り返した。混ぜる順番の工夫と特殊な界面活性剤の使用で製品化のめどをつけた。

 それでも「なぜうちがひびの薬を、という意見だった」と池田欣史専務が当時の社内の雰囲気を明かす。商品化会議は質問が連発。良い商品なのかを証明するため、大阪地区でテスト販売することになった。同社では異例の事態。担当した東京支店営業推進課の三宅淳氏は「当初、どれだけニーズがあるか全く分からず、売れるかどうか見えなかった」という。だが開発陣の「市場性はあるし実際に効く」という熱心な説得を受け、「じゃあという感じでだんだん乗り気になった」(三宅氏)という。

 テスト販売に合わせ、テレビCM放映とミニサンプル3万個の配布を実施した。すると効果はすぐに出た。池田専務は「薬剤師からの反響が大きかった。経営陣が皆ビックリした」という。全国区のドラッグストアからは「東京でも売りたい」と注文が殺到した。「当初の見込みの3倍売れた。在庫を多くしておいて助かった」と三宅氏は話す。

 1000円以下ばかりの冬用の皮膚薬で、15グラム1470円という価格設定も注文が増えた要因。ドラッグストアにとって、客単価を上げる製品は貴重なためだ。ヒビケアシリーズは、かかと用の「同FT」を発売するなど、ひびの起きる部分ごとに商品を展開。扇原グループ長は「肌の困りごとを技術力で解決したい」と、すでに次の商品開発に進めている。
(文=石橋弘彰)
日刊工業新聞2015年09月21日付
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
自分はあまりいびきはしないが、歯ぎしりがひどい。次は歯ぎしり対応のスプレーを!それにしても伝統の富山の薬売りも、伝統にあぐらをかかず、常に進化を目指しているところが素晴らしい。

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