広大な操車場跡地を健康タウンに

JR吹田のまちづくり動き出す

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JR京都線 岸辺駅前のイメージ(吹田市資料)
 大阪府の北部、吹田市と摂津市にまたがる旧国鉄・吹田操車場跡地の再開発計画が本格的に動き始めた。1984年(昭59)の機能停止以来、実に30年もの時間を要した。町づくりの方向性に関してさまざまな議論があったが、2013年に国立循環器病研究センター(国循)の誘致が決まり「健康寿命の延伸をリードする町づくり」計画が加速。関西イノベーション国際戦略総合特区に追加指定され、3月に実行計画が本決まりとなった。このエリアは古くからの住宅地で、地域との連携が不可欠。地域との親和性を重視した医療クラスターは全国的にも例がないだけに、実現に向けもう一段の工夫を望みたい。
 再開発の対象区域はJR東海道線の吹田駅から岸辺駅にまたがる約22ヘクタール。国循は国の高度専門医療施設の一つであり、循環器系では世界でもトップクラスにある。18年度に操車場跡地の3・1ヘクタールに移転する。

 大阪駅側には複合商業施設を挟んで吹田市立吹田病院が移転。また高齢者向け複合居住施設や健康増進広場、摂津市側を含む4ヘクタールには「イノベーションパーク=仮称」として関連企業や研究機関などの用地を確保した。各ゾーンが「健康・医療」の要素でくくられている。

 最先端の医療機関、地域住民サービスを主眼とした公立病院、関連施設などがごく近隣に立地することになる。それぞれの機能は異なるが、担当者は「各機関が独立して存在するのではなく、協力・支援し合いながら相乗効果を得たい」と意気込む。国循と吹田病院双方の代表や実務者が一堂に会する協議を10回近く開催した。

 商業施設でも「健康・医療」のコンセプトを貫く。岸辺駅前の複合商業施設は「来訪者の健康に関する行動変容を促す施設」と位置づける。具体的なイメージは未定だが、例えば飲食店にもひと味違ったメニューを並べることになりそうだ。

 重要なカギを握るのがイノベーションパーク。企業誘致はこれからの段階だが、国循との共同研究など地元産業界の期待は大きい。ビジネスチャンス創出に加え、地元が期待するのは健康寿命の延伸に資する機能を持つ「パーク」に育てることだ。単なる企業誘致ではなく、NPO法人やコミュニティービジネス事業者が進出企業とともに新たな事業を生み出し、それを地域住民らに提供する。こうしたコンセプトは、従来の医療クラスターにはないものだ。

 周辺の医療クラスターには神戸医療産業都市や大阪北部の彩都エリアなど優れた先進事例がある。吹田跡地再開発には、これらと違う役割が求められよう。健康・医療の新たな町づくり「吹田モデル」実現に向け、新コンセプトの貫徹を願う。

日刊工業新聞2015年04月06日 総合2面

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加藤正史
論説委員会
論説委員

 鉄道好きはどうしても車両や風景に関心を寄せますが、産業としては土地利用は重要です。とくに線路周辺の空き地は駅にも近く、密集した都市部の重要な再開発の拠点。大阪だけでなく東京や名古屋でも大型プロジェクトが動いています。1本の線路は長期にわたって町の中心になるのです。

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