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今度の帰還は「流れ星ひとつ」で

小惑星探査機「はやぶさ2」 CG映画で先取り
今度の帰還は「流れ星ひとつ」で

初代「はやぶさ」の帰還CG (C)JAXA/池下章裕

 小惑星探査機「はやぶさ2」を応援するプラネタリウム用全天周映像『HAYABUSA2―RETURN TO THE UNIVERSE』が夏から公開されている。ようやく上映館も増えてきたので鑑賞に出かけた。

 初代「はやぶさ」が深宇宙で故障した時、その復活を願って製作された前作の続編。分離したカプセルと探査機本体が二つの火の玉になって再突入する前作のシーンは、実際の帰還を先取りしたとして異例の人気を呼び、多くの観客が目頭を熱くした。

 実機の公開前に製作された今作も大半がコンピューター映像。H2Aロケットで打ち上げた2代目が、燃えながら地球に落ちる初代と宇宙空間で交差し、役割を引き継ぐ。

 目的地の小惑星は、まだ識別符号しかない。衝突装置でクレーターを作る場面や初代が失敗した小型着陸機などの新たなミッションを描く一方、劇的な事件は起きない。プロジェクトに携わる関係者も、そんな不具合を望むまい。

 姿勢制御を失った初代は、カプセルの後ろで燃え尽きるしかなかった。しかし本来、帰還するのは標本を搭載したカプセルだけ。探査機は次の星に向けて旅立つ。だから今作のラストの“流れ星”は一つ。涙ではなく笑顔で迎えるのが、この宇宙探査の本当のゴールだ。
日刊工業新聞 2014年12月04日 総合1面
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
 初代「はやぶさ」はいくつかの商業映画になりましたが、帰還が絶望視される中で製作したプラネタリウム用映画が最も感動的だったように思います。 常人が想像する以上に「もしも」に備えていたプロジェクトチームのことを考えれば、奇跡の帰還という評はあたりません。 進行中の「はやぶさ2」が、当然のように帰還してくることを願います。

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