M&Aを繰り返すキヤノン、御手洗会長は「22年からの成長」に自信のワケ

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キヤノン会長・御手洗冨士夫氏

―米国・イラン情勢や米中貿易摩擦、技術革新など事業リスクが山積みです。

「グローバリゼーション(グローバル化)とデジタイゼーション(デジタル化)という二つの大きな潮流により世界経済が大きく変動し、その真っ直中に我々もいる。プリンターやデジタルカメラが腰折れし、約1兆円の売り上げを失った。ポートフォリオの入れ替えを目指して新しい産業を取り入れるため、この10年ほどM&A(合併・買収)を繰り返した。イノベーションによって産業はどんどん変わっていて、変わりそこなった会社はつぶれて、波に乗った会社は発展していく、ものすごく厳しい時代だ」

―2019年12月期連結業績は減収減益の見通しです。業績の底入れはいつ頃でしょうか。

「ここ3年は海外中心に構造改革費用がかさんで損益計算書(P/L)を悪くしていた。20年はP/Lの問題も消えてマイナス面がなくなったものの、新しいポートフォリオの充実はこれから始める。プリンターなど現行製品の落ち込みが底を突いて、新規事業の成長スピードが上がり会社全体として真水でプラスになるのは21―22年を見込む。22年頃から再び成長力を回復できる」

―米ゼロックスの米HP買収検討や、富士フイルムホールディングスとゼロックスの販売提携解消などで事業環境は変わりますか。

「(レーザープリンター供給で)35年付き合っているHPのことは熟知しており、買ったり買われたりする事態は現時点で起こらないと思う。富士フイルムとゼロックスの間でいろいろあっても、事務機器市場全体としては足元で直ちに影響はないと見ている」

―最近の産業界では親子上場解消の動きが活発です。

「上場企業でおのおのの役目が違うので、キヤノンマーケティングジャパンやキヤノン電子と合併する必要がない。役割分担のために上場しているので、元に戻すつもりは全くない。販売会社には『キヤノンの枠を超えて一般商社になれ』と言っている。どんな製品でも買ってきて世界中に売ることで発展してほしい」

【記者の目/変身力のDNAを信じて】

デジカメや事務機器販売の落ち込みは想定以上の速度で進んでおり、業績回復がその分遅れる。新規事業は順調に育っているものの、主力事業の穴埋めを任せるのは時期尚早だ。御手洗冨士夫会長が誇る「変身力というDNA」を信じて今は我慢の時となる。同業他社も苦しむ構造不況からいち早く脱し、かつての勢いを取り戻せるか。(聞き手・鈴木岳志)

日刊工業新聞2020年1月10日

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キヤノン 御手洗会長

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