オムロンが過去最大の買収に踏み切る理由

産業用ロボットに参入。インダストリー4.0のソリューションを増やす

  • 1
  • 3
IoTの自社活用事例を目指す草津事業所
 オムロンは16日、産業用ロボットメーカーの米アデプトテクノロジー(カリフォルニア州)を株式公開買い付けで買収し、産業用ロボット事業に参入すると発表した。買収額は約2億100万ドル(約241億円)で、同社としては過去最大規模。10月22日に買い付けを完了し、完全子会社とする予定。
 
 アデプトテクノロジーが手がけるのは汎用ロボットと無人搬送ロボット。オムロンでは自社の制御機器事業にロボットを加えることで、モノづくり現場での自動化ニーズに幅広く対応するのが狙い。これまで人手作業で行っていた組み立てや箱詰め、搬送などを自動化するのが特徴で、中国での人件費高騰や人手不足なども加わり、今後市場が拡大すると期待している。
 
 制御機器事業を統括する宮永裕執行役員専務は「1年前から買収を検討していた。幅広いロボットをそろえているのが強み」と、アデプトテクノロジーを選んだ理由を説明。同社の売上高は2015年6月期で5420万ドル(約65億円)にすぎないが、市場成長にオムロンの販路活用などが加わり、「何倍にもなる。数年先には数百億円の貢献をしてもらう」と期待を示す。
 
 溶接や塗装などで普及する産業用ロボットだが、最近は組み立てなどに使う汎用の小型ロボットが注目されている。オムロンでも自社制御機器に他社ロボットを組み合わせるケースが出始めており、ロボット事業を自社に取り込むことで、差別化を進めたい考え。

IoT活用し国内外の工場を“つなぐ”


2015年05月01日


 オムロンは国内外の自社工場をネットワークでつなぎ稼働状況などを共有するシステムの構築に乗り出す。プログラマブルロジックコントローラー(PLC)などFA機器の生産が主な対象。草津事業所(滋賀県草津市)で確立した稼働データ収集・分析システムを他工場に展開し、データをリアルタイムで共有可能にする。ドイツのインダストリー4・0などで複数工場の連携が志向される中、IoT(モノのインターネット)技術を用いた自社発の事例を提示し、ビッグデータの収集・送信に対応したPLCの拡販につなげる。2016年にもシステムの一部を完成させ公開することを目指す。
 
 草津事業所、中国上海市のFA機器工場などでの運用を視野に検討を始めた。どちらかの工場で需給が逼迫(ひっぱく)した際、もう一方がリアルタイムで対応し代替生産することなどを想定する。機密性を確保するため、まずプライベート(私設)クラウドでのデータ共有を構想しているもようだ。
 
 草津事業所では既にPLCの生産でビッグデータ活用システムを運用し、顧客などへ公開している。PLC用の基板1枚1枚が実装ライン上で移動するタイミングなどをセンサーが検知し、生産の進捗(しんちょく)状況を可視化する仕組み。
 
 生産量を常時把握できるほか、個々の基板が1工程ごとに要した時間がグラフに示されるため、ムダなどが生じるとすぐに判明する。
 
 工場同士がリアルタイムで連携するインダストリー4・0の構想に触発されてか、国内のFA業界ではIoTに関連する動きが活発だ。三菱電機は拠点間の通信時などにデータの安全性を確保する機器を開発。ファナックも遠隔地で稼働するロボット向けの監視機能を今夏提供開始する。
 
 国内製造業は欧米に比べIoT活用に消極的とされるが、オムロンを含めたこうした取り組みが各業界のトップ企業をどう動かすかが注目されている。

COMMENT

明豊
デジタルメディア局
局長

最近はペッパーなどサービス系や人型ロボットばかりにスポットライトが当たりがちだが、産業用ロボット市場はまだまだ大きな成長余地とイノベーションの可能性がある。その大きな文脈がIoTとインダストリー4.0。情報を制御するPLCだけでなく、情報を取りに行くロボットは欠かせない製品。

関連する記事はこちら

特集