日立の取締役改革がお手本?「東芝問題」検証会議の人選にサプライズ

金融庁が日立の川村前会長を起用。ラストマンはどのように窮地を救ったのか

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最近は年に一度、海外で取締役会を開く日立(13年12月ワシントン)
 金融庁は企業統治の状況を検証するために設置する有識者会議の委員に、不正会計問題で揺れる東芝のライバル、日立製作所の川村隆相談役(前会長)を起用した。有識者会議は17人で構成。東芝問題に加え、機関投資家による行動指針の受け入れや上場会社の社外取締役の選任の状況などを議論する見通し。24日に初会合を開く。座長には、企業統治指針の策定に尽力した池尾和人慶大教授が就く。

 東芝と日立製作所は長くライバル関係にある。東芝の首脳陣はここ数年、大幅な赤字からV字回復し成長軌道に乗り始めた日立を以前にも増して意識していた。日立はグローバル戦略へ舵を切ると同時に取締役改革にも乗り出し、それを主導したのが2009年に子会社から日立の会長兼社長として呼び戻され窮地を救った川村氏である。

 日立は昨年、トップ交代に踏み切った。実はその1年前から取締役会の議長を務めていた川村会長(当時)は、取締役会のメンバーに対し3人を「次期社長候補」と伝え、能力や人物を評価してもらっていた。必ずしも日立の取締役会がすべてうまく機能しているわけではないが、6月から上場会社に義務づけられた新たな企業統治の原則「コーポレートガバナンス・コード」を、先取りしようとする意識が強かったのは間違いない。

 日本を代表する名門企業の東芝。不正会計は対応策は個別企業の話だけにとどまらない。金融庁の有識者会議は傷ついた日本の企業経営の信頼回復を図る狙いがある。

 日立の中西宏明会長兼最高経営責任者(CEO)は今年のある取締役会で、外国人取締役からこんな指摘を受けた。「情報通信の世界は大きく変化し、巨大企業が減収減益に陥っている。日立はどう対処しているのか?」。

 中西会長は一瞬、たじろいだが、最近の日立の取締役会では日常茶飯事の光景だ。グローバル企業の経営陣は意見を主張し合い、周囲を説き伏せるのが一般的。外国人取締役の感覚からすると、他の社内取締役が中西氏の回答に追従することは許されない。主体性に乏しい人物と判断され、問題視される恐れもあるからだ。

 「外国人は『借り物の意見では本当のリーダーシップは生まれない』と考えている。この時は幸いにして社長らと意見が異なっていた」と中西会長。海外の大手企業の取締役会は、国際的な目線で問題を提起すると同時に、経営者の資質にも目を光らせ、強いリーダーを育てる。

 かつて日本流経営の代表格だった日立。東京電力やNTTグループの設備投資に依存し、国内市場だけで稼げた時代が長く続いた。その日立がなぜ外国人取締役を取り入れることになったのか。

 転機は2009年。国内製造業で過去最大の当期赤字を計上し、瀕死(ひんし)の重傷を負った。生き残るには海外に活路を求めるしかない。それには国際競争で戦い抜いた外国人経営者の知恵が不可欠だった。「経営を革新するため、必要以上に多様性を取り入れた」。会長兼社長に緊急登板した川村氏は当時を振り返る。

 取締役会は一変した。特に俎上(そじょう)に上がったのが利益水準の低さ。日立は11年度から全社的なコスト削減活動に注力し利益創出に努めたが、営業利益率は5ー6%にとどまる。「この活動で利益率は上がったのか?」―。社外取締役で米3MのCEOも務めたジョージ・バックリー氏は愚直な改善活動への評価ではなく、明白な成果を求めた。

 日立や東芝がお手本としてきた米ゼネラル・エレクトリック(GE)は2ケタの利益率をたたき出し、最近は金融や家電部門を縮小、インダストリアル・インターネットに集中し始めている。日立の外国人取締役たちは、海外勢に劣る収益力に疑問を呈し、経営陣に正面から切り込んでくる。中西会長は「日本人だけだとどうしても紳士的な会議になる。外国人が加わり議論が伯仲するようになった」という。 

 日立の基本理念に“和”の1字がある。結束と相互理解を大切にする創業時の精神で、実に日立らしい考え方だ。ただ、この理念だけでは今の取締役会は通用しない。月並みな計画や成果が報告されると、外国人取締役が猛然と異議を唱え、和の弊害とも言うべき“なれ合い”が打破される。

 「川村相談役が言うラストマン(最終責任者)の意味が分かってきた」と話すのは東原敏昭社長兼最高執行責任者(COO)。いずれ東原氏は中西会長の後を継ぎCEOになる。外国人取締役が求める高い目標を達成するにはどうすれば良いか。一方で末端の従業員の意識を一つにまとめるには、和の理念も必要になる。国際競争を戦い抜く意識をみなに共有させることが、ラストマンの責務になる。

COMMENT

明豊
デジタルメディア局
局長

日立のガバナンスがすべて機能しているわけではない。社内稟議のスピードもまだまだ遅い。それでもここまで取締役会の改革を実施し確実に収益も上向きつつある。川村氏も利害関係などをあまり気にせず冷静にズバズバ意見する人。ぜひ有識者会議が実のあるものになってもらいたい。

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