EU離脱も関係なし、日本で愉しむ英国流アフタヌーンティー
ブレグジットの話題の絶えない英国が、欧州連合(EU)加盟によって得た恩恵の一つに、おいしい食材が流入したことが上げられる。自由な食材を輸入できたおかげでロンドンの食事はずいぶんと改善した。20年前に比べると、おいしいレストランがかなり増えたと感じる。
その英国の食文化で人気を誇るのがアフタヌーンティーだ。その歴史は19世紀半ばに、第7代ベッドフォード公爵夫人アンナ・マリアによって始まったとされる。
日本語に訳すと「午後の紅茶」となるが、この名の飲料を1986年から発売するキリンのホームぺージによると「午後の紅茶」のパッケージに描かれた女性の絵がアンナ・マリアその人だそうだ。発案者の絵をデザインに用いた事例である。
アフタヌーンティー文化は、女性の社交場の役割を担って発展して行った。お茶をいただく空間や家具や食器には、時代ごとの様式やデザインの影響を見ることができる。アフタヌーンティーの象徴である3段のティースタンドは、狭いテーブルに軽食やお菓子を数多く並べるためにデザインされたものだ。3段をどんな食材や色味で盛り付けるかは、作り手の腕の見せどころだ。
ロンドンでのアフタヌーンティーは、歴史と伝統に支えられて、本場ならではの雰囲気を醸し出し、一度は体験する価値がある。バッキンガム宮殿に近いザ・ゴーリングホテルは、家族経営でありながら五つ星を獲得した格式あるホテルで、キャサリン妃が結婚式の前日に家族と宿泊したホテルとして知られる。このホテルのアフタヌーンティーは、英国内のコンテストで度々受賞をしており、地元でも人気だ。
ロンドンを訪れるまでもなく、東京のホテルでもアフタヌーンティーを楽しむことができる。高層階のパノラマビューとともに楽しめるのも魅力の一つだ。マンダリン オリエンタル 東京では、さまざまにテーマを変えて、スィーツやセイボリー(塩味の食べ物)で3段のティースタンドを彩る。多種多彩なお茶を楽しむことができ、お菓子の味、盛り付けやサービス、空間デザインの全てが本場に引けを取らないクオリティーの高さで、リピーターも多い。
(文=西谷直子<三井デザインテック・コミュニケーション・エディター>)