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米国の新車に自動ブレーキ標準搭載へ。日米欧10社が合意

日系ではトヨタ、マツダ。米当局と協議し高級車以外での普及狙う
米国の新車に自動ブレーキ標準搭載へ。日米欧10社が合意

歩行者、悪天候にも対応する新予防安全システム

 トヨタ自動車など日米欧の自動車メーカー10社が米国で販売するすべての新型車に自動ブレーキを搭載する。米運輸省道路交通安全局(NHTSA)と米道路安全保険協会(IIHS)と合意した。一部モデルに限られている自動ブレーキの普及をてこ入れする。
 
 自動緊急ブレーキ(AEB)を標準搭載することで合意した。NHTSAとIIHSとメーカーは今後数カ月かけて、実施スケジュールなどを協議する。
 
 アンソニー・フォックス運輸長官は「車の安全は、事故時の乗員保護より衝突そのものを防止する時代に入った」とした上で、「自動ブレーキなどの技術がオプションか高級モデルでしか利用できなければ、新たな時代の恩恵を受ける米国民はわずかになる」とコメントしている。
 
 合意したのはトヨタ、マツダの日系2社に加え、アウディ、BMW、メルセデスベンツ、フォルクスワーゲン、フォード、ゼネラルモーターズ、テスラ、ボルボの計10社。2014年の米市場(大中型車を除く)の57%を占める。他の自動車メーカーにも参加を促す。IIHSなどの調査によれば、自動ブレーキ技術は保険金を35%減らすことができる。
 
 自動ブレーキはシステムの低コスト化や安全意識の高まりを背景に先進国を中心に拡大している。日本では富士重工業が先駆け。自動ブレーキを含む運転支援システム「アイサイト」の搭載車の販売比率は85%にものぼり、安全技術が販売を支えている。日産自動車が15年度内に国内のほぼすべてのカテゴリーに自動ブレーキを搭載する方針。高級車以外での展開が遅れていたトヨタも、安全技術パッケージ「セーフティー・センス」を17年までに日米欧のほぼすべての乗用車に搭載する計画だ。

トヨタ慎重姿勢から転換。17年までに一気に展開


日刊工業新聞2015年1月20日付


 トヨタ自動車が自動ブレーキを中心とする、新開発の予防安全システムを2015年に導入する。安全性能を高めつつ、小型車を含めた幅広い車種に展開するため低コスト化した。自動ブレーキは今や軽自動車にも搭載され、ユーザーの関心も高い装備。トヨタではこれまで高級車など一部車種にとどまっていたが、新システムは「一気に普及に向けて展開する」(吉田守孝専務役員)と、17年までに日米欧のほぼすべての乗用車に設定する計画だ。
 
 「(安全システムは車両の)販売上の話とは基本的には切り離して考えてきた」(吉田専務役員)。競合他社が自動ブレーキを販促材料として扱う中、トヨタも当然、販売店から「早くほしい」と催促を受けていた。
 
 しかしトヨタはあくまで慎重姿勢を貫いてきた。トップメーカーのトヨタが安全分野で“間違い”を犯せば、どうなるかを十分、理解していたからだ。「トヨタとしてこれは安全だと言えるシステム」(同)を開発するとともに、訴求の仕方についても「顧客が過信したり、誤解を招いたりするような売り方はしない」(同)と強調する。
 

構成するほとんどの部品を標準化


 新予防安全システム「トヨタ・セーフティー・センス」は小型車向け「C」と中・上級者向け「P」の2種類を用意。こだわったのは「実安全に効果がある」(同)こと。軽自動車で多く使われているレーザーのみのシステムは、至近距離しか認識できないため、交通事故死亡率が急増するという時速30キロメートル以上では作動しない。
 
 その軽自動車向けシステムと競合することになるCは、単眼カメラとレーザーレーダーの2種類のセンサーを組み合わせることによって同80キロメートルまで作動する。一方、Pは単眼カメラとミリ波レーダーを組み合わせた。歩行者にも対応し、悪天候にも強いのが特徴だ。

 また「TNGA」と呼ぶトヨタの設計改革の中で、構成するほとんどの部品を標準化。量産効果によりCの価格は「レーザーのみのシステムと同等価格で提供できる」(同)とした。世界的に需要が高まる予防安全システム。トヨタは満を持して投入する新システムでライバルを一気に追い上げる。(名古屋・伊藤研二)
日刊工業新聞2015年09月16日 自動車面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
自動ブレーキは制御も含めなかなか難しい技術で部品メーカーの協力が不可欠。デンソーのほか、海外勢ではボッシュやコンチネンタルなどメガサプライヤーが安全技術で抜きに出ている。日立やパナソニックなど電機メーカーも長く開発準備を整えてきており、一気の普及で収益源になるかもしれない。

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