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新日鉄住金とポスコ「和解の損得勘定」

特許侵害訴訟取り下げ。中国経済減速で鋼材市況が悪化し、解決急ぐ!?
新日鉄住金とポスコ「和解の損得勘定」

方向性電磁鋼板

 新日鉄住金と韓国のポスコが方向性電磁鋼板の特許侵害などをめぐる訴訟で9月末にも和解する見通しとなった。ポスコが3000億ウォン(約300億円)の合意金を支払うなど、大幅に譲歩することで最終協議が進んでいるもよう。中国経済の減退に伴う鋼材市況の悪化は韓国も巻き込んでおり、ポスコとしても解決を急ぐことが得策と判断したようだ。

 和解内容は合意金のほか、ポスコが方向性電磁鋼板を輸出する際には新日鉄住金に技術使用料を払い、さらに地域別の輸出量も協議して決めることにする。代わりに新日鉄住金は日本と米国、韓国それぞれの裁判所で起こした訴訟を取り下げる。

 方向性電磁鋼板は変圧器の鉄心などに使われる。新日鉄住金の高性能品を使えば、変圧時の損失を抑制でき、大幅な省エネルギーを実現できる。八幡製鉄所(北九州市戸畑区)内の生産工場は限られた社員しか入れないよう厳重に管理。世界トップを自負する技術の外部流出には細心の注意を払っていた。その強いこだわりもあり、法廷闘争まで発展していた。

 訴えられたポスコも対抗措置を講じていたが、裁判が始まった12年以降、鋼材市況が徐々に悪化。さらに、ここに来ての中国経済の変調で、アジア市況は「最悪に近い」(鉄鋼大手首脳)惨状。ポスコも例外なく巻き込まれた。加えて、過去の買収事業の不振や経営改革の遅れなどもささやかれており、“内憂外患”の状況だ。法廷闘争とは別に、両社は00年に結んだ戦略的提携は継続しており、早々に関係改善を図りたいというポスコの思惑も透けて見える。
日刊工業新聞2015年09月16日 3面
村上毅
村上毅 Murakami Tsuyoshi 編集局ニュースセンター デスク
 電磁鋼板は特殊な製造方法で鉄の磁気特性を高めた鋼板で、特に方向性電磁鋼板は一方向に磁化しやすい特性を持たせることでエネルギー効率を高め、変圧器の鉄心に採用されている高機能材料だ。裁判で明らかになったのは高度な技術を不正取得する経緯が、より組織的な犯行だったということ。技術をどう守るのか。その難しさを物語っている。

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