中小製造業のWEB動画活用のカギは「リアルを見せる」
「リアルに何かの形でモノを見せないと、お客さんには信用してくれないんですよ。それで自分の会社の研削盤で動画を撮ってお客さんに見せました。そしたら大反響ですよ」
工作機械などの位置決めスイッチを製造するメトロール(東京都立川市)の松橋卓司社長は、自社の顧客に動画を見せたときの反応を興奮気味にこう語る。 メトロールの作るようなBtoBの製品では、顧客に対して文章や写真で製品の長所や使い方を説明するのは簡単ではない。ましてや業界の既成概念を打ち破るような画期的な製品ならなおさらだ。
松橋社長も顧客にどう伝えるかは苦労したそうで、最終的に動画で見てもらうという手法にたどり着いた。そこで中小製造業向けの動画制作サービス「動画製作所」を手がけるカンノ・カンパニー(東京都三鷹市)に協力を依頼した。
動画で「リアル」を見せる
松橋社長は、「製品がどう動作して、どんな機能を発揮するかを動画で示しました。その代表事例がエアセンサーによる研削盤の位置決めです。これまでMC(マシニングセンター)やNC旋盤では全自動化が図れています。ところが唯一、研削盤だけはアナログな職人技に依存せざるを得ませんでした」と説明。その上で、「当社製品を使えばこれが全自動化することを映像でリアルに表したところ、大反響でした。常識が通用しない世界の場合は、リアルに何らかの形でモノを見せないといけないんです」と振り返る。
その結果、某大手工作機械メーカーが自社の研削盤に採用するなど、動画が着実に営業に結びついたという。松橋社長は、「動画を使って成功しました。現物ももちろん見せるんですが、分かりやすく要点をコンパクトにまとめた動画を見てもらって、メーカーのトップの人とか『研削盤も自動化できるんだ』『これをやらないと乗り遅れてしまうかもしれない』ということをすべて理解してもらった」とその効果を喜ぶ。
動画で「きっかけ」をつかむ
現在、動画の本数は40本ほど。メトロールでマーケティングを担当する松橋泰取締役は、動画で顧客に伝えるポイントは、「作り物ではない、『本当』というのが大事です。それと短い時間にコンパクトに伝えることです」と指摘する。
それはどういうことか。松橋取締役は、「要は動画は“つかみ”なんです。きっかけを作ってもらい、実際の展示会でのデモに来てもらうんです。展示会で実機に計測器をつけてもらい、本当に数値が出ることを実感してもらうんです」と説明する。動画でまずは顧客の関心を引き、展示会まで足を運んでもらう。さらに実際の研削盤などで試してもらい、契約に結びつける。こうした流れを作るためにも、まずは動画で関心を呼び起こすことが大事というわけだ。
メトロールは現在、営業部門の社員に対し、1人1台ずつiPadを支給し、営業活動をさせているという。動画コンテンツをより効果的に活用するためだ。松橋取締役は「最近は研削盤の動画に限らず、動画コンテンツを複数持っていないと仕事ができないという風になっています。BtoBの商材は特徴の説明が難しい。動画ならそれも可能です。営業に不可欠のツールになっています」と言い切る。 また会社説明会に来られない地方の学生向けに、新卒採用風景を社内でリアルに撮影して公開することも考えているという。
動画で「確実」に伝える
さらに動画の効果が高いのは取り扱い説明だという。「取り扱い説明書はきちんと読まない人も多いし、伝わらないこともある。動画の方がちゃんと伝わることが多い」と松橋社長は指摘する。
特に取り扱い説明書は低コストでたくさん作ることが重要になる。その点、動画製作所のサービスはスピード感やライブ感、カジュアルさなどに力点を置いており、そうした動画制作の姿勢が選ばれた理由の一つのようだ。
松橋取締役も、「1人でやって来て、手際よく撮影・編集し、仕上げてくれた。午前中に撮って、午後、編集したベータ版をもとに、こちらのリクエストを伝えて追加修正してくれました。そのお手軽感に好感を持ちました」と喜ぶ。また、「ITの知識が豊富なので、iPadでたくさんの動画をスムーズに見せる方法など、いろいろと教えてもらえるのもありがたかったです」と振り返る。
営業がいくら言葉を尽くしても、なかなか顧客に伝わらないことでも、動画なら確実に伝わることがある。優れた企業向けの動画には、そうした顧客の気持ちを最後に後押しし、決断を左右する「ラストワンマイル」になることもありそうだ。
「動画製作所」は中小製造業専門の動画制作サービス。撮影・編集だけでなく、動画の社内制作支援サービスも提供している。動画製作所へはこちらから
取材協力:メトロール
https://www.metrol.co.jp/