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IoTとサービス産業化の波。プラットフォームを制するのは誰?

製造業革命でライフサイクルの全ての時間にステークホルダーが関与
 IoT(Internet of Things)やビッグデータが標榜(ひょうぼう)され、次世代の産業構造を変える動きとして注目されている。ICT(情報通信技術)の技術革新の背景には、産業構造の質的変革の試みがある。

 技術的変化については、モノがネットワークでつながるという次元の異なった革新性を秘めた要素技術が出そろい始めた。クラウドコンピューティング、ビッグデータ解析、セキュリティー、人工知能と多彩である。

 この中で産業構造の質的変革も模索されている。先進国は、産業革命以降、工業化については効率化や生産性を高めながら経済成長を遂げてきた。一方、サービス業(第3次産業)は、このような効率化や生産性向上は手つかずになっている。

 米国でこれを明確に提言したのは、2004年の通称パルサミーノレポートであるが、事業環境がサービス産業化している状況を明示し、サービスの効率化にイノベーションを起こすことこそ、米国の産学官の使命であると言及した。
 

業界間に高い障壁


 IBMのCEOであったパルサミーノが、そのために社内でサービスサイエンスを立ち上げた。先進国の産業構造がサービス産業に向かうのであれば、情報産業をコンピューターサイエンスが牽引(けんいん)したように、サービスサイエンスで次の時代を牽引する。まだ、業界間の統合に高い障壁があり課題となっているが、既存のセオリーを重ね、新しいセオリーを生み出そうという流れは活発で、勘や経験に依存せず効率化を図るための構造や論理構築が展開している。その後、IBMはもとより、米国のIT企業はこれに追随する努力を続け、自社に占めるサービス事業比率を確実に伸ばしている。

 経営とは本来サービスであり、モノとサービスを統合・融合して経営理論を再編しようという試みであるサービス化が、従来のモノづくりの経営と概念的に大きく異なる要素は、時間である。

 モノづくりの多くはQCDで捉えられており、もちろん時間はコストや納期においては競争力の要件であったが、サービス化においては、ライフサイクルの全ての時間にステークホルダーが関与し、時間が直接価値化される状況が生まれる。
 
 指数関数的に進化する高性能化したデバイスがモノとつながるIoTや、モノと人の補完的関係でサービスが提供される仕組みは、サービス化を新しい価値で実現する。航空機エンジンの時間売りや代車サービスによる時間提供などは先行的な例である。効率化においても時間はリスクとして概念化され、QCDRがデザインされる。サービスの効率化を必要とするあらゆる場で新しいイノベーションの潮流が生まれている。

文=松永統行氏(国際社会経済研究所主任研究員・NECグループ) 

日刊工業新聞2015年09月11日付「ICT世界の潮流」より
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
こうなると製造業の概念が変わる。M&Aの相手も製造業同士ではなく、いずれ「製造業+IT」という大型経営統合が出てくるかも。

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