テニスのボール打つ瞬間を認識するAI、どんな用途に使える?
慶大などが開発
慶応義塾大学理工学部の青木義満教授やパナソニックなどの研究グループは、テニス選手がラケットでボールを打つ瞬間を認識できる人工知能(AI)技術を開発した。テニスの動画を利用し、ボールを打つタイミングの画像約6万枚を教師データとしてAIに覚えこませた。AIが打ち始めから打ち終わりまでの動作を認識できることを確認した。動画からボールを打つ瞬間という重要な場面だけを抽出し、ハイライト動画を生成するなどの用途が期待される。
詳細は12月13日に東京都千代田区の東京国際フォーラムで開かれる「第20回慶応科学技術展(慶応テクノモール2019)」(日刊工業新聞社後援)で紹介する。
研究グループは、脳の神経回路をまねた「ニューラルネットワーク(NN)」の構造を工夫。長い時間がかかる動作の途中経過を飛ばすことで時間の長さをそろえ、時間の長さにかかわらず動作を認識できるようにした。
テニスの試合でラリーの各場面ごとにショットの速度は異なる。ショットの速度が違うと、一連の動作にかかる時間が変わってしまう。テニスだけでなくスポーツでは同じ動作であってもかかる時間が異なる場合があり、こうした場合には解析できなかった。今回用いた手法はバレーボールや卓球などボールを打つ競技に応用が可能となる。
さらに同様の手法を水泳にも応用した。複数の撮影画像をAIに学習させ、実際の映像から泳ぐ際の腕の動作である「ストローク」を推定できる技術を開発した。ストロークの回数から泳いだ距離が分かる。水泳では一かきで泳げる距離が重要だが、今まではコーチが選手のストローク数を数えていた。速度が上がる前に腕の振りが速くなるなど、ペースが変わるタイミングを把握できれば、コーチングに生かせる可能性がある。
日刊工業新聞2019年11月28日