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Google、コカ・コーラなども顧客に!卓球ラケットECが人気のワケ

文=尼口友厚(ネットコンシェルジェ CEO)米国企業のアクティビティでの広がりをチャンスに
Google、コカ・コーラなども顧客に!卓球ラケットECが人気のワケ

「Uberpong」で購入されたさまざまなオリジナル卓球ラケット

 企業内で行われる卓球を通じ、交流などのコミュニケーションを図る取り組みが米国で広まっていることは知っていますか?

 今回紹介するのは、自分の好きなデザインのラバーを注文できる卓球ラケットをネット販売するスタートアップ企業。主要な顧客は法人なのだが、その面々がすごい。Google、コカ・コーラ、Nikeなど米国を代表する有名企業からオーダーを受けているのだという。

 消費者からの利用に加え、大手や有名企業から企業ロゴ付きラケットや卓球台の製作オーダーも数多く受けている。設立後間もないスタートアップ企業が大手や有名企業の注目を集め、知名度を上げていったのか。それは、卓球というスポーツの特徴を把握し、企業活動の変遷を素早くキャッチ、それを企業ブランディングに活用できるようにした取り組みが秘訣(ひけつ)にありそうだ。

米国では卓球がアクティビティという形でブームになりつつある


「Uberpong」の成長ポイント

●米国企業などのアクティビティとして卓球が普及しつつあり、それをビジネスチャンスとした

●自由にカスタマイズできる卓球ラケットの販売は、メディア露出につながり、認知が広まった

●「卓球を広める運動」を企業と一緒に取り組んでいる


 ところで、あなたは卓球と聞けばどんなイメージを抱くだろうか?
 僕の場合、温泉旅行で旅館に置いてある卓球台でプレーをしたという記憶が強過ぎたのか、いまだに「温泉、旅館≒卓球」というイメージを抱いてしまっている。だが、ルールの易しさ、プレーする条件は整えやすいことから、若い人からお年寄りまで、年齢や性別、場所を問わずに愛されているスポーツの1つだ。

 卓球はヨーロッパでも盛んに行われているが、北米ではヨーロッパやアジアほど浸透していない、と言われてきた。僕も「米国と卓球」というイメージを持ったことがなかったが、最近ではアクティビティという形でブームになりつつあるようだ。

 新たな卓球ブームの火付け役となったのが、今回紹介するオリジナルの卓球ラケット販売サイト「Uberpong」だ。https://www.uberpong.com/
 2012年、米国オースティンで設立された「Uberpong」では、デザイナーが手がけたデザインをラバーに印刷した卓球ラケットや、ユーザーの思い思いの写真やイラストをラバーにプリントしたものを購入することができるという。

自分の好きなデザインのラバーを注文できる


 「Uberpong」は現在、2種類の卓球ラケットを販売している。1つは世界各地のグラフィックデザイナーがデザインしたラバーを選べる「DESIGNER PADDLES」。もう1つは、自分自身が選んだデザインを使用する「CUSTOM PING PONG PADDLES」だ。ともに競技用ではなく、レクリエーションを楽しむことを目的に作られている。

 各デザイナーが手がける「DESIGNER PADDLES」の価格は30ドル(約3600円)。より細かなカスタマイズをしたい利用者のために、20ドル(約2400円)でラバーのない「UBERPONG BLADE」も販売している。なお、卓球ラケットにはシェークハンドやペンホルダーなどいくつかバリエーションが存在する。しかし、「Uberpong」のラケットはレクリエーション用ということがあってか、形状や材質、厚さなどは1種類のみ。カスタマイズすることはできないようだ。

 ユーザー自身の趣味で好きなデザインを指定できる「CUSTOM PING PONG PADDLES」では、さらに両面のラバーに同じデザインをプリントするのか、片面ごとに異なるデザインにするのかを選択することができる。2つのプランで若干料金は異なり、前者は34ドル(約4100円)、後者は39ドル(約4600円)だ。

 デザインに使用する写真やイラストは、パソコンからアップロードすることもできるし、「Instagram」や「Facebook」アカウントを用いて、自身が投稿したデータを使用することが可能。なお、画像は5メガバイト以内のJPGかPNGファイルで、650×650~2000×2000ピクセルのものを奨励しているとのことだ。

「Uberpong」のデザイン・ラケットの内容はおおよそこのようなも。これだけ見ると、趣味で卓球を楽しむユーザーが、自分の個性をアピールするための商品を購入できるサイトに思えてくるだろう。ところが、「Uberpong」の主要な顧客は法人であり、Google、コカ・コーラ、Nike、Red Bull、TOMs、Levi'sなど米国を代表する有名企業からオーダーを受けているという。

 なぜ「Uberpong」のデザイン・ラケットが、そうそうたる企業に注文されることになったのだろうか? 創業者のストーリーとともにその秘密に迫ってみよう。

山口豪志
山口豪志 Yamaguchi Goushi Protostar Hong Kong 董事長
こういうニッチなカテゴリー商材で市場をつくる。決して大きな市場ではなく見えても、その業界で一番になること(この場合は卓球のオリジナルデザインラバー)で、一定の事業になるという好例。こういうニッチトップが溢れる社会はなかなかに面白いと思う。

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