5年に1度の“キヤノン祭り”で披露された2020年までのシーズ
「私は敵対的買収はやらない」(御手洗会長兼CEO)
【ニューヨーク(米国)=政年佐貴恵】キヤノンが5年に1度開く製品・技術の展示会「キヤノンエキスポ」が9日、米ニューヨーク市で始まった。デジタルカメラやプリンターといった既存事業の最先端技術に加え、目立つのは遺伝子診断装置や監視カメラなど、今後5年間の”事業のシーズ(種)“だ。「2020年に売上高5兆円、営業利益1兆円」の達成は、これら新規事業の育成がカギを握る。
御手洗冨士夫会長兼社長兼最高経営責任者(CEO)は「20年に新規事業で売上高1兆円」を一つの目標に掲げる。けん引役は、ネットワークカメラ事業だ。
14年にビデオ管理ソフトウエア大手、オランダのマイルストーンシステムズを、5月にはネットワークカメラの業界最大手、スウェーデンのアクシスを相次ぎ買収した。キヤノンの光学・生産技術、7万5000社のパートナーを抱えるアクシスの販売網、マイルストーンの画像解析技術を合わせて垂直統合を進め、事業を急拡大させるのが狙いだ。
【ネットワークカメラ】
アクシスを買収したキヤノンのネットカメラ市場でのシェアは28%程度。同市場は年率20%で成長し、20年には2兆円規模になるともされ「このままのシェアでも5000億円の事業規模が見込める」(御手洗会長兼社長兼CEO)。新たな柱としての期待は高い。
NYの野球場「ヤンキースタジアム」を再現したスペースを使い、カメラで個人を識別して得点数などを表示する用途を紹介。初日の会場には、アクシスのレイ・マウリットソン会長兼社長も訪問。
【ロボットビジョンシステム】
ロボット事業も台頭してきた。14年に”ロボットの目“となる3次元(3D)マシンビジョンセンサーを製品化し、海外展開も開始。将来は内製用のロボットの外販も視野に入れる。
動いている物体の3次元形状と表面の模様を、リアルタイムで高精度に検出する。ここに使われた技術をベースに、新たなマシンビジョンの製品化を進める計画だ。
【遺伝子診断システム】
従来の光学技術の横展開とも言える得意分野で基盤を作った後の成長を見込むのが、医療分野だ。ターゲットは主に遺伝子診断の領域で「5―10年と多少時間はかかるだろうが、成長分野と位置づける」(同)。3月には米に医療事業の統括会社、キヤノンバイオメディカル(ニューヨーク州)を設立したほか、関連企業との提携や戦略的投資も進める。
キヤノンバイオメディカルが製品化した「ノーヴァリル」は、遺伝子の異常を検出するための試薬キットだ。装置を製品化する可能性も視野に、5―10年後の飛躍に向けて事業を加速する
【8Kカメラシステム】
「まるで遊園地のアトラクションみたい!」。そんな歓声が漏れたのは、フルハイビジョン(FHD)の16倍の解像度を持つ8K映像を大画面に映し出したコーナー。キヤノンが開発した8Kカメラシステムで撮影した街の風景や、山の中を電車が進む様子が流れると、あたかも自分がその中にいるかのような錯覚を覚える。3D映像のような奥行き感や風景の鮮明さが際立つ。2020年を前に市場が広がる成長分野と位置づけている
―キヤノンエキスポの見どころは。
「既存事業の最先端技術と、今後5年間で製品化していくものを披露する。大きなテーマは『IoT(モノのインターネット)』。製品と製品、製品とデバイス、製品と人のコネクティビティー(相互接続性)を軸にした製品を多数展示する。MR(複合現実)システムや4Kディスプレー、シネマ用カメラ、監視カメラ、遺伝子診断装置などさまざまだ。4回目の今回は過去最大の規模になる」
―16年からの新5カ年計画の注力分野は。
「(カメラと事務機の)現有製品は技術投資を厚くし、高度化を進めてシェアを取る。また、既存事業を横展開して事業領域を広げる。加えて成長分野の新しいビジネスに積極的に投資していく。監視カメラや遺伝子診断装置、ロボットなどがそうだ。材料などの化学分野も5年のうちに事業化したい」
―最近はM&A(合併・買収)にも積極的です。
「これまで自己資本の強化に努めて強固な財務基盤を築き上げ、ようやく投資できる体制が整ってきた。今後もM&Aを進める方針だが、基本的に費用は現金でまかなう。現状でも3000億―4000億円の投資能力はある。M&Aの条件はキヤノンにない技術を持っていて、マネジメントがうまくいっていること。私は敵対的買収はやらない」
―16年に国内生産比率6割の目標を掲げていますが、国内への投資は。
「今でも毎年3000億円程度の投資をしており、これを続ける。IoTやインダストリー4・0などの新しいモノづくりにも対応していく」
―売上高5兆円、営業利益1兆円の目標に再び挑みます。
「達成直前にリーマン・ショックでかなわなかった夢に、再チャレンジする。グローバルで多角化を進め、日米欧それぞれが本社として機能することで、それぞれの地域の事業を成長させて実現したい」
御手洗冨士夫会長兼社長兼最高経営責任者(CEO)は「20年に新規事業で売上高1兆円」を一つの目標に掲げる。けん引役は、ネットワークカメラ事業だ。
14年にビデオ管理ソフトウエア大手、オランダのマイルストーンシステムズを、5月にはネットワークカメラの業界最大手、スウェーデンのアクシスを相次ぎ買収した。キヤノンの光学・生産技術、7万5000社のパートナーを抱えるアクシスの販売網、マイルストーンの画像解析技術を合わせて垂直統合を進め、事業を急拡大させるのが狙いだ。
【ネットワークカメラ】
アクシスを買収したキヤノンのネットカメラ市場でのシェアは28%程度。同市場は年率20%で成長し、20年には2兆円規模になるともされ「このままのシェアでも5000億円の事業規模が見込める」(御手洗会長兼社長兼CEO)。新たな柱としての期待は高い。
NYの野球場「ヤンキースタジアム」を再現したスペースを使い、カメラで個人を識別して得点数などを表示する用途を紹介。初日の会場には、アクシスのレイ・マウリットソン会長兼社長も訪問。
【ロボットビジョンシステム】
ロボット事業も台頭してきた。14年に”ロボットの目“となる3次元(3D)マシンビジョンセンサーを製品化し、海外展開も開始。将来は内製用のロボットの外販も視野に入れる。
動いている物体の3次元形状と表面の模様を、リアルタイムで高精度に検出する。ここに使われた技術をベースに、新たなマシンビジョンの製品化を進める計画だ。
【遺伝子診断システム】
従来の光学技術の横展開とも言える得意分野で基盤を作った後の成長を見込むのが、医療分野だ。ターゲットは主に遺伝子診断の領域で「5―10年と多少時間はかかるだろうが、成長分野と位置づける」(同)。3月には米に医療事業の統括会社、キヤノンバイオメディカル(ニューヨーク州)を設立したほか、関連企業との提携や戦略的投資も進める。
キヤノンバイオメディカルが製品化した「ノーヴァリル」は、遺伝子の異常を検出するための試薬キットだ。装置を製品化する可能性も視野に、5―10年後の飛躍に向けて事業を加速する
【8Kカメラシステム】
「まるで遊園地のアトラクションみたい!」。そんな歓声が漏れたのは、フルハイビジョン(FHD)の16倍の解像度を持つ8K映像を大画面に映し出したコーナー。キヤノンが開発した8Kカメラシステムで撮影した街の風景や、山の中を電車が進む様子が流れると、あたかも自分がその中にいるかのような錯覚を覚える。3D映像のような奥行き感や風景の鮮明さが際立つ。2020年を前に市場が広がる成長分野と位置づけている
御手洗冨士夫会長兼社長兼CEOインタビュー
―キヤノンエキスポの見どころは。
「既存事業の最先端技術と、今後5年間で製品化していくものを披露する。大きなテーマは『IoT(モノのインターネット)』。製品と製品、製品とデバイス、製品と人のコネクティビティー(相互接続性)を軸にした製品を多数展示する。MR(複合現実)システムや4Kディスプレー、シネマ用カメラ、監視カメラ、遺伝子診断装置などさまざまだ。4回目の今回は過去最大の規模になる」
―16年からの新5カ年計画の注力分野は。
「(カメラと事務機の)現有製品は技術投資を厚くし、高度化を進めてシェアを取る。また、既存事業を横展開して事業領域を広げる。加えて成長分野の新しいビジネスに積極的に投資していく。監視カメラや遺伝子診断装置、ロボットなどがそうだ。材料などの化学分野も5年のうちに事業化したい」
―最近はM&A(合併・買収)にも積極的です。
「これまで自己資本の強化に努めて強固な財務基盤を築き上げ、ようやく投資できる体制が整ってきた。今後もM&Aを進める方針だが、基本的に費用は現金でまかなう。現状でも3000億―4000億円の投資能力はある。M&Aの条件はキヤノンにない技術を持っていて、マネジメントがうまくいっていること。私は敵対的買収はやらない」
―16年に国内生産比率6割の目標を掲げていますが、国内への投資は。
「今でも毎年3000億円程度の投資をしており、これを続ける。IoTやインダストリー4・0などの新しいモノづくりにも対応していく」
―売上高5兆円、営業利益1兆円の目標に再び挑みます。
「達成直前にリーマン・ショックでかなわなかった夢に、再チャレンジする。グローバルで多角化を進め、日米欧それぞれが本社として機能することで、それぞれの地域の事業を成長させて実現したい」
日刊工業新聞2015年09月10日&11日付