映像制作現場の人手不足、機器メーカーはどう解決する?
人手不足やコンテンツ需要拡大などを背景に、映像制作の現場も働き方改革が求められている。映像機器やシステムを手がける各社もそうした課題に応える技術開発に注力する。15日まで開催した映像機器展示会「国際放送機器展(インタービー)」では、各社がソリューションや開発中の最新技術を披露。4K・8K放送といった技術への対応が注目されがちだが、操作性や利便性の向上を重視した新製品の登場も相次ぐ。
(文・国広伽奈子)
“出口”多様化
>映像制作現場で働き方改革の重要性が高まっているのは慢性的な人手不足に加え、高精細映像の普及や動画コンテンツの需要拡大などが理由だ。大型スクリーンを使ったパブリックビューイングやサイネージ(電子看板)など映像の活用先は増えたものの、割ける人的リソースは限られる。
ソニービジネスソリューション(東京都港区)のバリュー・クリエイション部門の小貝肇マーケティング部担当部長は、「映像の“出口”が多様化する中で、柔軟な環境が必要だ」と指摘する。
映像関連製品のBツーB(企業間)ビジネスを展開する同社は、IP(インターネット・プロトコル)を活用した撮影・映像編集環境の構築にも取り組んできた。従来よりケーブルに左右されない制作環境は、効率化のニーズが特に高い地方テレビ局を中心に高い関心を呼んでいるという。
出展社数が過去最大規模となったインタービーでも、環境改善に対する各社のアイデアが集まった。パナソニックは障がい者スポーツの「ボッチャ」を最新のデジタル技術でエンターテインメント性を向上した「サイバーボッチャ」を会場で実演した。
IPや自動追尾型のカメラ、字幕制作システムなどを駆使して、華やかな演出と少人数運営を両立したスポーツ中継を披露した。池上通信機が開発中のロボットカメラは遠隔操作が可能で、省人化や効率化のニーズに応えられる。
新製品続々
撮影機材でも小型・軽量化だけでなく、操作性の向上で作業効率化を高める新製品の発表が相次いだ。放送用レンズでは、オートフォーカス機能を備えた4K放送用レンズを富士フイルムが投入。「映像の高精細やスローモーションの活用拡大で、ピントにより高い精度が求められている」(富士フイルム)ためだ。キヤノンも、従来の高精細テレビ(HDTV)用や4K放送用と同じ操作性を保った8K放送用レンズを発売する予定だ。
2020年は東京五輪・パラリンピックが開かれるなど、映像製作の需要は高まっている。各社はこうしたニーズをとらえ、ソフトとハードの両面で、働き方改革の実現を支援しようとしている。
AF機能を搭載した富士フイルムの4K放送用レンズ(カメラはソニー製)