「至高」の人工芝 神宮球場に採用

住友ゴムが開発、耐久性2倍に向上

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天然芝により近づけた…と話す住ゴム産業の吉澤貢社長
 2015年のプロ野球・ペナントレースが開幕し、はや2週間が経過した。各地の球場で熱戦が繰り広げられている。そんな中、東京ヤクルトスワローズの本拠地である明治神宮野球場(神宮球場)はシーズン開幕に先立ち、グラウンドの人工芝の全面張り替え工事を7年ぶりに実施した。採用した人工芝は、住友ゴム工業が野球場専用に新たに開発した「ハイブリッドターフ エキサイティング」。販売と施工を手がけた住ゴム産業(大阪市中央区)の吉澤貢社長は「住友ゴムの人工芝の商品群のうち、野球場用としては最上級」と出来栄えに胸を張る。

 住友ゴムの人工芝の神宮球場への採用は、08年の前回工事に続いて2回目となる。同球場はプロ・アマの公式戦が年間約450試合開催される。高頻度の使用に対応できるよう、人工芝にはねじれや傷、折れへの耐性が求められる。今回導入した「ハイブリッドターフ エキサイティング」は同社従来品に比べて耐久性を2倍に引き上げたのが特徴だ。

 耐久性を上げるために断面が楕円(だえん)形と三角形の2種類の芝葉を使用している。材質はともにポリエチレンで、前者は幅1ミリメートル、厚さ310マイクロメートル。後者は幅1・5ミリメートル、厚さ400マイクロメートル。材料や形状を一から見直し、2種類の芝葉を織り交ぜることで耐久性の大幅な向上を実現した。

 芝葉の長さ(芝丈)は2種類ともに62ミリメートル。下から40ミリメートル程度まではクッションの役割を果たすゴムチップや目砂で埋められるため、実際に表に顔を出す芝葉の長さは20ミリメートル程度となる。新人工芝はゴムチップと目砂の配合を改良することで、ボールのバウンド量を抑え、天然芝により近づけた。時速80キロメートルの球を打ち付ける性能試験を実施したところ、従来の人工芝は1メートルほど跳ねるのに対し、新人工芝は60センチメートル程度と、バウンド量が4割低減した。

 一般的に人工芝は天然芝に比べてボールが跳ねやすい。そのため手前でバウンドした打球が野手の頭上を越えるほどに跳ね、後逸してしまう、いわゆる「バンザイ」がしばしば発生する。「ハイブリッドターフ エキサイティング」はバウンド量を抑えたことで、浅いフライでもバンザイを恐れずに果敢に前に突っ込める。「商品名の通りエキサイティングなプレーが期待できる」と住ゴム産業体育施設部課長代理の国近雄介さんは話す。

 「ハイブリッドターフ エキサイティング」の開発にあたっては、スワローズの選手や球場職員らの意見も反映した。「従来の人工芝は軟らかすぎて足が疲れる」との選手の声を踏まえ、表層部のグリップ力を向上。打球の反発を抑えるために下層部は軟らかさを保持し、「硬さと軟らかさ」という相反する要素を両立させた。このほか芝葉に太陽光を反射する機能を付加しており、夏場のグラウンドの温度を従来品比で5度C程度下げる効果が期待できるという。まさに「選手の体に優しい人工芝」に仕上がった。

 3月13日に同球場で開かれた関係者向けの見学会には、ゲストとして元スワローズ内野手の宮本慎也さんが参加。宮本さんは「以前の人工芝は軟らかかったため打球がイレギュラーしやすく、守備力を必要とした」と、「守備の職人」ならではの観点で振り返る。

 過去のチーム成績を見ると、セントラル・リーグ6球団の中で、スワローズの守備率(守備機会に対して失策しない率)は13年、14年シーズンの2期連続でワースト2位。一方、チーム打率は14年シーズンに首位となり、「打のチーム」の様相を呈している。宮本さんは「新しい人工芝は下が硬くなった分、打球が野手の間を抜けやすくなる。現状のチーム特性に合っており、ホーム球場のアドバンテージをさらに生かせる」と期待する。

 住友ゴムでは、芝丈の長いロングパイル人工芝「ハイブリッドターフ」を00年に発売。競技用途に応じて商品群を拡充し、14年末までの施工実績はシリーズ全体で累計400万平方メートルに上る。気になるのは20年の東京オリンピック・パラリンピック関連需要。住ゴム産業の国近さんは「五輪競技のうち人工芝で行うのはホッケー場のみだが、大会前のトレーニング施設やキャンプ施設まで含めると15万-20万平方メートルの需要が想定される」と話し、ハイブリッドターフシリーズの拡販に意欲を示す。

日刊工業新聞2015年03月16日 自動車面掲載記事を加筆

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斉藤陽一
編集局第一産業部
デスク

日本野球機構のサイトで2005年シーズン以降のスワローズのチーム打率(セ・リーグ6球団)を調べると、05年1位、06年2位、07年2位、08年4位、09年2位、10年2位、11年3位、12年1位、13年4位、14年1位。10年間で首位が3度、「Aクラス」入りは実に8度。青木選手や岩村選手、宮本選手ら高アベレージを残すヒッターがいた影響もあると思うのですが、「打のチーム」と言って間違いなさそうです。

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